「自分でも分らない」とはね
2014年21日
小渕経産相と松島法相が辞任しました。政界に疎いわたしでも、政界は、それを取り巻く政治メディアを含め、つくづく不思議な世界だと思います。政界は分らないというより、外部からみても分らないようにしておくのが政界のノウハウなのでしょう。困ったものです。
まず、安倍首相の「任命責任」です。「2人を任命したのはわたしです。任命責任はわたしにあります」と、首相はいいました。その通りでしょう。では、任命責任をどう取るのですか。本人も言いませんし、首相を追及する野党も「任命責任を追及する」と、言葉では勇んでいます。メディアも「任命責任の取り方」に言及しません。「任命責任」を口にしたとたん、一件落着の不思議な世界なのですかね。閣僚は辞任すれば、ひとまず責任をとったことになるでしょう。首相はどうなのでしょうか。潔く責任を認めたことは立派だったで、免責にするのですかね。
民間の企業では、社内の不祥事、幹部のスキャンダルがあると、トップも責任をとって辞めたり、減俸したりします。不祥事を起した幹部を起用した責任を取ることも含めての話です。政界でも重大な局面では、首相が辞職することもあるでしょう。それでは、今回の「任命責任」の取り方はどうなるのでしょうか。安倍首相が辞めることはないでしょう。「任命責任はわたしにある」と陳謝すれば、それで済むのですかね。そうとは思えません。「今後、閣僚の人選を厳格にし、このようなことが起きないよう務める」と、重ねて陳謝すれば、それで終わりですか。便利な不思議な言葉です。
次は小渕経産相の話です。資金報告書における1億円にのぼる収支のずれについて、「わたし自身が分らないことが多すぎる。弁護士や税理士に調べてもらう」と、発言しました。「分らないことが多すぎる」は虚言であり、「知ろうとしないでおくことにしてきた」が正解でしょう。政界では、カネの流れに不正、不透明さがつきまとうので、あとで政治家の責任を追及されるのを恐れます。そこで秘書任せ、担当者任せといって逃げる仕切りを、合意か暗黙の合意のもとで、作っておくのです。外部からの責任追及をしにくくしているのです。
まともな企業では、弁護士、会計監査法人、税理士が少なくとも年次の決算、帳簿を厳格にチェックしています。粉飾決算が発覚すれば、刑事事件になりえますし、社長の退任に及ぶこともあります。小渕氏の場合は、企業でいう粉飾決算ですね。日ごろから弁護士、会計士などに第三者の目でみてもらわねばなりません。そうしないのは、何か都合の悪いことがあるに違いなく、外から見て、内部を分りにくくしているでしょう。これからそれをお願いする、というのは無責任極まりません。
小渕氏については、メディアの報道に、何度も首をかしげました。読売新聞は「将来は、首相候補と目されてきた」という表現が記事に登場しました。リップサービスで1回くらいならともかく、19日に1回、20日には大きな解説記事の中に3回でした。21日はなんと社説にも同じ表現が登場するという厚遇ぶり、一般記事では「首相候補の再起なるか」という見出しで破格の応援記事でした。新聞社と特殊な関係があると邪推されても仕方ないところですね。他紙にはほとんど見当りませんでした。読売だけとは、これもどうしたことでしょうか。
小渕氏は40歳、父親譲りの地盤、選挙システムを持ち、選挙には強いようです。一方、政治思想、政策面の能力は不明だし、未知数でしょう。将来、有望な政治家に成長する芽がないとは限らないにせよ、それを今の段階、レベルで「将来の首相候補」と新聞社が連呼するとはなんでしょうか。政界と政治メディアには不思議な関係があるのかもしれません。
下手をすると、自分の政治生命を絶たれかねない政治資金の管理ができず、あまり関心も持たず、重大問題が発覚すると、「自分は知らなかった」です。そうためらうことなく、言い切る人物は少なくとも現在、「首相候補」とはまずいえないでしょう。「はっきりして、正直でいいね」は、国際政治では通じません。韓国、北朝鮮、中国、ロシアにいいようにあしらわれます。
松島法相は、ウチワを配ったくらいで、辞任に追い込まれるなんてと、本人は思っているでしょう。記者会見に向う映像を見ていましたら、不遜な態度で、薄ら笑いを浮かべていましたよ。ウチワはともかく、薄ら笑いとはなんでしょうか。何が悪かったのかの自覚が欠落していますね。
選挙区でウチワを配っただけで、閣僚辞職という政治史に名を残してしまいました。ウチワを「政治の討議資料」、「いつか捨てられるのだから、財産上の対価物ではない。法に触れない」、「野党の追及は雑音である」など名言を連発しました。これも政治名言史残るでしょう。ウチワが問題ではないのです。ウチワは些細な話です。名言、迷言の数々で国会が紛糾するのは、当然です。無神経です。口が達者すぎ、災いのもとになりました。閣僚としての人選ミスでしたね。もっとも、柄が付いていればウチワ、柄がついていなければセーフとか。公職選挙法の寄付行為にあたるかどうかの判定を政界は大真面目にやっているのです。おかしくなります。
最後に、後任の経産相になった宮沢氏は、テレビにまずい場面が映ってしまいました。会見に向う途中、喜びを隠しきれず、「うれしくてたまらん」という表情がうかがえました。入閣希望の待機組が50人いるとのことです。正直なひとですね。不祥事の後を受けた交代人事ですから、ここはうれしさをぐっとこらえなければなりません。政界は不思議なところです。2閣僚の辞任騒動は政界の裏を改めて学習させてくれました。
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