政策論争を避けるな
2024年9月14日
自民党総裁選は12日に告示され、過去最多の9人が立候補し、上位2人の決選投票にもつれ込むと、予想されています。これまでの決選投票では、派閥の領袖らの密室の駆け引きが行われ、順位の逆転もあった。閣僚、党の主要ポストは論功行賞のような形で配分された。
派閥解消が進んだ今回は、どのような形で決選投票が行われるのだろうか。改革派と保守派の2人が残った場合は、改革志向の議員らは改革派を推し、保守志向の議員らは保守派議員に投票するでしょう。2人が改革派だった場合はどうするか。
私は上位2人が決選投票に入る前に、米大統領選のように、公開討論をすべきだと思います。両氏の政策をじっくり聞き、議員らは投票に入る。上位2人が27日の投開票日で決まったら、どちらを選ぶべきか議員らに考える時間を与える。過去のような密室の取引から脱却してほしいのです。
現在、米国では大統領選(直接選挙)が進行中です。民主党のハリス氏と共和党のトランプ氏が対決し、11月の投票日まで、白熱の議論の応酬が行われます。政治、経済、外交、中絶問題、不法移民問題など、洗いざらいの分野にわたり、両氏の政治思想、政策選択、人物・人格が明らかにされる。国家のトップを決めるプロセスがさらけ出されます。
米国は政策重視の決定、日本は政策よりポスト配分、貸し借り、密室の取引による決定です。せっかく派閥が解消に向かっているのですから、日本も政策重視の決定に方向転換してほしい。
間接選挙の日本では、自民党総裁に選ばれた議員が国会で首班に任命されます。今回は9人が立候補して、所見を述べ、12日には共同記者会見が行われました。立候補者が9人もいるので、1人当たりの発言時間は限られ、候補者を十分、吟味することが難しい。
朝日新聞は「石破茂・元幹事長(67)と小泉進次郎元環境相(43)の2人を軸に選挙選は展開される」とし、2人の決選投票を予感させる書き方です。世論調査では、石破氏、小泉氏が1、2位に並ぶか、争う展開になっているとまで書いても、「2人を軸に」とまでは踏み込んでいません。
かりに石破、小泉両氏が1、2、位をしめると、両氏は改革派に入るのでしょう。小泉氏は「聖域なき規制改革を進める。選択的夫婦別姓に賛成で、国会で法案を通す」といい、石破氏は「政治不信を払しょくする。アジアで集団安全保障の仕組みを作る。巨大災害に備えた防災省を創設する。女系天皇の選択もありうる」などと述べ、改革派といっていい。
対する保守派の筆頭は高市氏で「選択的夫婦別称には慎重。安定的な皇位継承のための皇室典範の改正(男系男子による天皇制維持、女系天皇を否定)」が信条です。旧安倍派の支持者が多い小林氏は「財政より経済を優先(アベノミクス継続)、男系男子の皇統を守る」とし、49歳という若さのわりには、高市氏に近いようです。男系男子に限っていたら、皇室は先細りするでしょう。
そこで問題は、上位2人に小泉、石破氏が並んだ場合、政策志向が反対である高市、小林氏ら保守派はどのような判断でどちらに投票するのでしょうか。「規制改革の断行、原発容認」の河野氏は小泉、石破氏を支持してもおかしくない。
上位2人が改革派と保守派に割れた場合は、どちらにつくか議員らは判断しやすい。そうならなかった場合、上位に食い込めなかった立候補者、その支援者はどうするのでしょうか。自民党総裁は事実上、首相に就任するのですから、上位2人は公開討論を嫌わないでほしい。事前にそうした事態を想定していなかったにしても、記者会見に臨むくらいのことはできるでしょう。
政界の世代交代は進むでしょうから、麻生太郎、森喜朗氏らは黙っていてほしい。次世代に責任を持てる世代が政治の中核を担えば、膨大な国債残高を次世代に残すことを反省する政治が行われるでしょう。小泉氏を推している菅氏もキングメーカーぶらないことです。
9人の顔ぶれをみると、森、麻生、安倍、菅氏らと違った時代が始まるのでしょう。高市氏のように時代の変化に鈍感な議員は別として、政治家としてのレベルはこれまでと違ってきています。誰が総裁になるかより、日本の政治がどう変わっていくかを注目したいと思います。
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