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アベノミクスに異変か

2014年10月03日 | 経済

 金融緩和の副作用が次々

                  2014年10月3日

 

  アベノミクス(安倍政権の経済政策)に異変が起きているように思えます。異変という言葉が強すぎるのであれば、変調の兆しが強まっていると言い換えましょうか。これが成功し、日本が20年に及ぶデフレから脱してもらいたいという願いは、わたしも変わりません。実際はどうかというと、不都合な現象があちこちに現われ、シナリオが狂い始めているようですね。

 

 最も大きな誤算は、急激な円安でしょう。円安は、ある水準から円の価値が下落する場合と、経済の実力より円の価値がなくなる場合など、いろいろな意味で使われます。今、その両方が進んでいるようですね。最近、円安がまた進み、1ドル110円前後となり、安倍政権の発足以来、なんと25円も下落しました。今後はどうなるかというと、年末には115円とか、中期的には120円台が定着するだろうとか、エコノミストたちはいっています。

 

 日銀が巨額の国債を市中から買い上げて大量の通貨を市場に供給し、ゼロ金利政策を徹底する異次元緩和が円安を後押ししました。はじめは安倍政権も日銀も経団連も大歓迎で、「アベノミクスはさすがだ」との評価がもっぱらでした。円安による輸出増加、企業収益の好転を見込んで、株価も上がりました。それが105円、さらに110円まで進むとなると、副作用が強まってきました。輸入する原材料、エネルギーの価格が円安で上がり、それが消費財に波及し、カップヌードル、外食チェーンのギョーザ、チャーハン、チーズなどにまで値上げが広がっています。

 

 円安になると、円の価値が減ります。ドルに換算した日本経済の価値も減っています。上場している大企業などは、円換算した海外からの所得が見かけ(名目)だけ増え、企業収益が増加するでしょう。考えてみれば、円の価値が下がっているのですから、名目的な企業収益が増えないと、企業収益の実質的な価値は減ってしまうのです。喜んでいる時ではありません。

 

 経済価値が減った円で海外から原材料、エネルギーを買うのですから、円換算では値上がりするのは当然で、それが消費財の店頭価格の値上がりを招きます。日本では、原発が全て止まり、天然ガスを輸入し、火力発電を増やして穴埋めしています。そのため、電気料金も上がり、消費者の負担が増えています。天然ガスなどの支払い金額を減らすには、円高にして、円換算の金額を減らさなければならないのに、逆の現象がおきているのですね。

 

 次の誤算は、消費税の引き上げ(8%に)と政策的な消費者物価引き上げという、合わせワザが裏目に出ていることです。2%というインフレ目標を掲げ、心理的な効果でデフレを脱し、経済の好循環(景気回復)が始まり、所得が増えれば、消費増税を飲み込める、との腹つもりだったのでしょう。これまでのところ、逆に消費者は、消費増税による所得の目減り、政策的インフレによる所得の目減りのほうを実感しているようですね。

 

 インフレによる先買い需要の刺激を政府、日銀は期待したのに、節約志向のほうが強まってしまい、消費の回復は思わしくなく、これも悪循環にはまっている気配です。

 

 さらに、こうした経済環境のもとでは、「次の消費増税を15年10月とし、そのことを今年の12月には決める」(消費税法)ことが難しくなるという問題があります。このことについては、ブログでなんどか書いてきました。最近はデパート業界が「年末商戦の時期は避け、半年、延期してほしい」などといっています。「法律の予定通りに強硬突破」には、抵抗が強まるでしょう。

 

 10月に入って新聞は「景気回復、鈍い動き、日銀短観」、「円安を経済再生相が懸念」、「米国経済が順調に拡大しており、自然なことだと、日銀総裁が円安容認をくりかえしている。これが円安を加速」(いずれも読売)などと、指摘しています。安倍政権に親近感をもっているはずの読売が、日銀総裁を批判するようになっています。消費増税の延期が本音なのでしょうか。安倍政権の柱である消費増税、それを財源にした財政再建を先送りするとなると、今後のシナリオをどう書き換えるのか、アベノミクスは試練に直面しますね。

 

 異次元の金融緩和には、もともと難問がありました。「世界のマネー市場は通貨が供給過剰、つまり洪水状態になっており、それがバブルを生成し、バブルが崩壊すると、デフレをもたらす。それなのに、さらに集中豪雨のような異次元緩和をしたらどうなるのか」、「マネーの世界はつながっており、日本だけを対象とした金融政策は成功しない。金利ゼロの円資金でドルを買えばもうかる。急激な円安の一因となり、日本を苦しめることになるのではないか」、などです。

 

 アベノミクスの理論的支柱である異次元緩和の結末が、アベノミクスの評価を左右するのです。安倍政権はこのままでは手詰まりになるとみて、地方創生、女性活用など、目先を変えだしているような気がいたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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