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英国の分裂回避と「小国主義」への道

2014年09月25日 | 海外

  世界秩序は方向感覚を失う

                   2014年9月25日

 

 英国の分裂は回避されたものの、今後、「小国主義」の道を選ばざるを得ず、大国がひとつずつ消えていく時代に入ったと思いますね。その一方で、中東でイスラム過激派組織のマグマが爆発し、「イスラム国」という「国」が膨張を始め、蛮行を重ねる「イスラム国」はやがて消されても、中東の地鳴りは続くことでしょう。中国とロシアは「大国主義」の道を走り、米国は振り回されています。世界の秩序は解体か混乱か、そのどちらに向かっていくのでしょうか。

 

 先進主要国の経済、特に欧日からは、デフレの危機が去りません。マネー(通貨供給量)の過剰、ネット化による情報の過剰に振り回され、方向感覚を失っています。経済は長期の停滞期にはいったとか、マネー経済化のもとでの格差拡大が経済成長の足かせになっているとの仮説が注目されています。デフレの解決策とされる異常な金融緩和が、また矛盾を増幅しているとの指摘も聞かれます。世界経済はどの方向に向かっていくのでしょうか。

 

 スコットランドの独立否決で、最も印象的だった発言は、キャメロン首相の「英国の統治の姿を変える」です。イングランド、ウエールズなど、他の地域にも税収、歳出、福祉面での自治権を移譲するそうです。分権型国家の道を選ばざるを得ないというのでしょう。

 

 「小国主義」(マイクロナショナリズム)という言葉を最近、聞くようになりました。先進国ではマネー経済化、サービス産業化が進むにつれ、英国でいえば、ロンドンに富や人口が一極集中し、他の地域では富の分配にあずかれないという不満が高まります。スコットランド独立運動の重要な背景です。

 

 「地域のことは地域で」は、日本でもよく聞く言葉ですね。それには代価を支払わねばなりません。地域主義と小国主義を選ぶと、国防、エネルギー、国家財政など国家全体で取り組むべき問題に背を向けるようになります。地域の自立と、国際社会における国の自立のバランスがとりにくくなるのですね。

 

 世界全体が「小国主義」の世紀にはいったならともかくです。中ロが「大国主義」を掲げ、軍事力を行使しながら東シナ海での権益を拡充し、あるいは親ロシア派武装集団を使いながらウクライナにおける権限の割譲を求めるという時代環境のなかでは、「小国主義」はかれらを喜ばせますね。とはいえ、欧州では、ベルギー(フランドル地域)、スペイン(バスク自治州)、スペイン(カタルーニャ自治州)などで、独立運動がある地域が多くあります。独立まで至らなくても、地方分権と地方自治を進めていかざるを得ないことでしょう。

 

 「小国主義」は、世界経済の方向舵だったグローバリゼーション、マネー市場化、サービス経済化の、ある意味では、当然の帰結であるのかもしれません。世界市場の拡大により、強い国はさらに強く、強い企業はさらに強くなり、高所得層はさらに多くの富を得て、格差が増幅されました。経済成長に勢いがあった時代は、不平や不満が覆い隠されました。デフレないし、経済成長率の低下化で、経済の水深が下がってくると、矛盾が一気に水面上に浮上してくるのですね。

 

 暴力と恐怖で勢力圏を広げる「イスラム国」には、米欧やイスラム圏から数千人の若者がもぐりこみ、帰国すればしたで、テロをやりかねないといいます。そんなことが現実のものになれば、欧米社会は地獄です。その背景には、格差の拡大、底辺に落ち込んだらはい上がれないことへの若者の不満があるといわれます。

 

 米国のジョージタウン大のキング教授は「国家を超えた話し合いの場がこれほど必要とされながら、実現しないことは、いまだかつてなかった」(日経・経済教室)といいます。「米国が強力な指導力を発揮すれば済むような話でもない」とも指摘します。恐ろしい時代が続くのでしょうか。

 

 

 

 

 

 



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