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消費税10%は流動的

2013年10月14日 | 経済

  実施時期が奇妙  2013年10月14日

 

 消費税が来年4月に3%、引き上げられます。問題は2015年10月にさらに2%、引き上げられ、10%になるかどうかです。財政状態、社会保障財源の確保から考えると、とにかく10%まで引き上げるべきでしょう。今回の記事は「こうあるべき」論ではなく「果たして、そうできるかどうか」についての話です。

 

 わたしは、「2014年4月に3%、2015年10月に2%、引き上げる」ことが決まったとき、実に奇妙な印象を受けた記憶があります。野田政権当時の2012年8月、民自公の三党合意の下で、法案が可決されたときのことです。やっぱりそうなのかな、と今、思っています。

 

 安倍首相は「2015年10月に、(消費税法に書かれている通り、つまり予定通り)10%に引き上げるかどうかは慎重に判断する。デフレ脱却がまず目的だ」と述べました。今から2年後のことですし、消費税法の付則にも「経済情勢も検討して最終的に決める」旨のことが書いてありますから、そう不思議な発言ではありませんね。

 

 それに対して、麻生副総理・財務相は変化球を投げてきました。「予算編成を考えれば、2014年末までに2%上げを決めるのが望ましい」と発言しました。今から一年ちょっと後、2014年4月の引き上げからは9ヶ月後に、次の基本方針を決めなければならないとなると、安倍首相の発言と意味が相当、違ってきます。「おやおや、そんなに早い時期に次のことがきめられるのですか」となります。

 

 「2015年10月に2%、追加引き上げ」は、「早く消費税を10%にしないと、基礎的財政収支(プライマリーバランス)回復の政府目標に近づけない」という願望のもとで逆算して、時期を設定したのでしょう。それにしても妙な決定です。「一年半後にさらに2%、引き上げ」は容易なことではないと思います。

 

 消費税は個人消費、企業収益、景気全体に大きな影響を与えます。3%といえば、大きな上げ幅ですから、引き上げの波及的影響が一巡し、次をどうするかを判断するには、一年以上はかかるでしょう。追加引き上げをするなら、3%上げの後、2年程度の間隔をあけて次を実施するのが常識的でしょう。その常識を破っています。

 

 「10月実施」というのも、妙ですね。これまで消費税の導入(1989年4月)、2%引き上げ(97年4月)、今回の3%引き上げ(2014年4月)は、みな4月実施です。消費税のように大きな影響が出てくる制度変更は、政府にとっても、企業にとっても4月のほうが区切りがついて、やりやすいのでしょうから。

 

 2015年4月には、地方統一選挙があります。「2015年10月引き上げを、地方選挙前の2014年末には決めておこう。そうすれば統一選挙の争点にしないですむ」という政治的な計算が働いたのでしょうか。世論調査によると、消費税の来年4月引き上げには半数以上の支持があります。さらに2%、引き上げとなると、世論の反応は変わってくるかもしれません。野党は与党批判の材料に使うでしょう。それを避けようとしているのでしょう。

 

 安倍政権は2013年7月の参院戦の圧勝で、国会のねじれを解消したうえ、3年間は国政選挙なして済ませられる政治的環境を手にしました。そのもとで、消費税引き上げという極めて重要な課題の第一ステップはクリアしつつあります。第二ステップは、アベノミックス(安倍政権の経済政策)の検証、消費税引き上げの影響の見極め、軽減税率の導入、地方統一選挙の結果分析、世論の支持の動向など、野球でいうと、速球、カーブ、シュート、フォークボールなど様々な球種を打っていかねばなりません。障害物競走に臨むといってもいいかもしれません。

 

 かりに「2015年10月」を延期すると、今度は次の国政選挙に近づいてきます。追加引き上げをやりにくい政治環境をむかえます。今は、これ以上のことを予想することはできません。民主党政権の元指導者から内輪の話を聞く機会がありました。「消費税引き上げ、それも二段階になると、いくつもの山がくることになる」とおっしゃっていました。これまで書いてきたようなことを示唆したかったのかもかもしれません。

 

 



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