新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ

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硬膜下血腫の緊急手術(終)

2014年01月31日 | 社会

 回復。昔なら寝たきりに

                    2014年2月1日

 

 手術を受けた立川の災害医療センターに1月29日、術後検診にいきましたところ、CTスキャンの画像を見ながら担当医の先生が「順調に回復しています。次は1か月後で結構です」とおっしゃいました。手術のため切開した皮膚もつながり、全部、抜糸してくれました。昨年12月21日に硬膜下血腫で緊急手術をして約40日です。術後検診は3日後、1週間後、2週間後、そして次は1か月後と間隔がのびていますから、もう大丈夫ということでしょう。

 

 医師に少し質問をさせてもらいました。「あのまま放置しておいたらどういう状態になっていましたか」。「最近は様子がどうもおかしいということで、開業医経由か直接病院にこられるケースが多く、手術でほとんどが治ります。CTで頭部の内部の状況が分りますので、原因、疾患の部位がすぐ突き止められ、的確な手術ができるようになりました」。なるほど、なるほど。CTが絶大な威力を発揮し、多くの患者さんが救われているということですね。

 

 「CTがない時代はどうだったのですか」。「じわじわ症状が悪化し、血腫(血の固まり)が脳を圧迫し、強い頭痛、歩行困難、記憶障害などと進んで動けなくなり、恐らく多くの方が寝たきりになっていたのでしょう。想像で申しあげると、お年寄りに多い疾患なので、老化現象とみなされ、仕方がない、ということだったと思います」。「そうでしたか」。

 

 慢性硬膜下血腫は進行が遅く、症状が出てくるのもゆっくりで、よい検査方法もなかったので、お年寄りの場合は、医師がおっしゃるように「老化」で片づけられていた時代もあったのでしょう。昔だったら、わたしも今頃、寝たきりになり、家族が困り果てていたことでしょうね。  

 

 硬膜下血腫瘍には、急性と慢性があります。急性は交通事故などで脳挫傷が起きているでしょうから、すぐに頭部を開いて手術をします。始末に悪いのが慢性型です。高齢者、抗血栓薬(心筋梗塞、脳梗塞の防止薬、わたしの場合はワーファリンとバイアスピリン)の服用者に多い症状で、ちょっとした打撲から少しずつ頭の内部で出血が始まり、大きな血腫となり、疾患が悪化します。本人が気づかない程度の打撲でも、少量ずつの出血がゆっくり続くので慢性というようです。だからはじめは医師も見逃すこともあり、ひどい状態になってからあわてて病院にいくのです。

 

 今朝(2月1日)の新聞を見ていましたら、北海道の町長さん(65)が前日31日の夜、飲食店ビル内の階段から転落し、急性硬膜下血腫で死亡したという記事が載っていました。酔っていたのか、なにかの弾みで階段を踏み外して転げ落ちたのかもしれません。わたし自身、自分の病名を聞いて「これはいけない」と考えたのは、脳の内出血と聞き、急性硬膜下出血、くも膜下出血などと一緒くたにしてしまったからでしょうね。急性は強度の打撲で急激に出血し、脳圧が高まり重傷で、死亡しかねません。クモ膜下出血はさらに深刻で、脳動脈瘤破裂などで短時間で大量出血し、瀕死の重傷か死亡に至ります。医学記事などを調べてみて、慢性硬膜下血腫はこれらと、かなり性質の異なる疾患であることを知り、後で安心しました。

 

 CTスキャンには、本当に感謝しています。コンピューター断層撮影(computed tomography)の略語で、放射線(X線)で体を走査し、コンピューターで処理し、内部画像を構成する装置です。開発者の米国の博士が1979年にノーベル医学生理学賞を受賞しています。最近はコンピューターの性能が格段によくなり、撮影時間も短くなり、画像も精密になっています。

 

 他の医療機器を含め、CTスキャンで命拾いした人は数知れませんね。気になるのは身体が浴びる放射線の量です。医学用語では、CTスキャンの場合も、放射線被曝量はいくらいくらと、いいます。被曝量なんて、あまり気分がよくない言葉ですね。人体に悪影響がでないのかつい心配してしまいます。医学会の説明では「人体に影響が生じるよりはるかに少ない量しか使用していない。必要な場所のみ必要最小限の量しか放射していないから心配ない」そうですから、それを信じましょう。

 

 もっとも、わたしの場合は、これまで10回はCTスキャンをし、、それも頭部ですから、気にはなります。そこで何回か、撮影の際、放射線技師に「今のはどの程度の放射線量ですか」と聞きました。即答してくれる技師はいなくて、調べてから「何ミリシーベルトでした」と、教えてくれました。患者の気持ちを配慮して事前に、安全であること、どの程度の放射線量であるかなど、一言、教えてくれるといいのに、と何度か思いました。

 

 このシリーズも今回で終えるつもりです。同じような体験をした方がわたしの周辺だけでも、大勢いることが分りましたので、一言、結論として申し上げておきたいことがあります。抗血栓薬の使用を始めるときに、医師なり、薬を処方する調剤薬局が「頭部は軽い打撲でも慢性硬膜下出血につながることがありますので、気をつけてください」という注意喚起をしてほしいということです。ご愛読、ありがとうございました。

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