「けし粒」が大問題に発展
2015年6月27日
3月期決算企業の株主総会はピークを超え、円安、業績好調、株高で久しぶりに経営者はほっとしたことでしょう。そのなかで不祥事、不正事件から浮かぬ顔のトップもすくなくありませんでした。今年の特色は、その企業の製品名からはまったく連想できないような経営危機を招いている企業が勢ぞろいしたことです。
東洋ゴムは稼ぎの大半が自動車タイヤです。ゴム製品から派生して、地震に強い免震ゴムを開発しました。日本各地で震災が絶えませんから、狙いはよかったのでしょう。功をあせったのでしょうか。基準値以下の免震ゴムを使った装置を売り、しかも性能データの偽装されていたことが発覚し、違反建築は55棟から100棟にのぼるそうです。
製品は免震でも経営は激震
皮肉ですね。新分野の開発で経営の安定性を高めようという試み、つまり経営にとっても免震装置になるはずのものが、偽装データ問題で企業は激震に襲われることになってしまったのです。免震ゴムの売り上げは全体の0・2%というけし粒みたいな比率です。その失敗が売り上げ4000億円の大企業を存続の危機に追い込んだのです。会社ぐるみの偽装らしく、経営者は謝罪し、総退陣のようですから、悔やんで悔やみきれないでしょう。
けし粒といえば、世界的な電機メーカー、東芝も悔やみきれない思いでしょう。売り上げが何兆円ものマンモス企業で、不適切会計が発覚しました。インフラ、テレビ、半導体、パソコンなど主力分野で、工事原価の過小見積もり、販促費の計上漏れ、在庫の過大評価をしていたそうです。利益目標の達成への焦りが招いたとされ、利益が500億円、過大に計上されていたとか。
高くついた500億円
けし粒のような500億円です。全社的な会計基準の甘さ、以前の社長・役員も知っていた疑い、内部告発への対応の遅れなどが指摘され、けし粒が「企業統治」という本質的な大問題に発展してしまいました。第三者委員会の報告書をまって、経営者は進退を明らかにします。少なくとも現社長は引責退任でしょう。高くつきました。
自動車部品のエアバッグの欠陥事故が米国で大問題なったのは、タカタです。事故が多発し、死者まででて、世界各地で5000万台のリコールという騒ぎです。800億円という巨額の経費を計上したものの、集団訴訟、補償基金の設置など、これからいくら費用がかかるか分りません。世界をあまねく走る自動車という文明必需品に欠陥が発生した場合の怖さです。
当事者意識が乏しい創業家会長
空恐ろしくなったのでしょうか、経営のトップ雲隠れを続け、やっと記者会見したのは、今回の株主総会時です。発覚から何ヶ月もたっています。会見での表情はこわばり、唇をかみ締めるだけで、歯切れの悪い内容だったとメディアは伝えています。経営能力や当事者意識が乏しい創業家出身の若い会長にありそうなことです。会社の製品は事故防止の安全バッグ、シートベルトなのに、経営上の安全装置のことはすっかり忘れていたのでしょうね。これも皮肉な話です。
自動車で思い出したのは、トヨタの米国人女性役員が麻薬取締法違反容疑で逮捕されたことです。どんな麻薬かといいますと、鎮痛剤として医療用によく使われているそうです。服用時に多幸感が得られるので医療目的以外に乱用され問題になっているそうです。
登場が早すぎたトヨタ社長
トヨタはしばらく前に、米国で大規模なリコール問題を起こし、傷ついたダメージを修復するために行った抜擢人事が裏目にでたのです。このとき、豊田社長は対応が遅れ、やっと出席した米国議会の公聴会で攻撃され、涙を浮かべる有様で、話題をさらいました。その時の後悔からか、今回の米国人役員逮捕のときは、なんと容疑がまた確定していない翌日に記者会見を開き、謝罪しました。社長が登場するにしては、時期が早すぎたのではないですか。早すぎても、遅すぎてもいけない、不祥事の対応はタイミングが難しいのですね。
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