本音と本質が隠されている
2015年6月27日
安倍首相に近い自民党議員が勉強会「文化芸術懇話会」を開き、そこでの作家の百田尚樹氏や参加議員の発言が怒りを買っています。記事の扱いの大きさに大差があっても、戒める新聞論調は珍しく似ています。正攻法による批判はそれらに任せ、私は違った視点から問題提起をしてみましょう。
まずかれらの発言を裏返すと、相当な真実が含まれています。「マスコミを懲らしめるには広告収入がなくなるのが一番。経団連に働きかけてほしい」。これはこう言い換えましょう。「議員を懲らしめるには企業献金収入がなくなるのが一番。経団連に働きかけてほしい」。どうですか。
次に「悪影響を与えている番組を発表し、そのスポンサーを列挙すればいい」です。こう言い換えましょう。「悪質な議員名を発表し、その支援者を列挙すればいい」。そのリストには、政治資金規正法違反を逃れている議員を真っ先に書きましょう。どうですか。言い方をちょっと変えるだけで、かれらは実にツボにはまったことをいっており、参考になり、役立ちます。
本土の新聞もつぶしたいか
百田氏は「沖縄の2つの新聞社は絶対につぶさなあかん」と、発言し、後に「ポロッとでた軽口だった。冗談のつもりだった」と修正したのはウソでしょう。ウソというのは、「おれの発言を一面トップで扱って批判する本土の2紙(あるいは3紙)はつぶせ」くらいに思っているのでしょうから。はやり暴言も役立つのです。
不規則発言どころか、このような発言をすれば、メディア大騒ぎするだろうから、おれの宣伝になるというくらいの計算はしているのでしょう。人気のベストセラー作家ですから、いろいろ知恵は回しているでしょうね。メディアは、猛烈な批判のつもりが、百田氏の宣伝に手を貸しているかもしれないのです。相手はしたたかです。ここは老獪さが必要です。
メディアも発言内容に事細かに反論するのではいけません。「九条の会」の発起人の大江健三郎氏、脱原発の坂本龍一氏の発信力に対抗して、自民党はこの懇話会を設けた(朝日新聞)そうです。かれらの発言も調べ、逸脱しているのか、いないのかを記事にしてほしいですね。「かれらは正しい。百田氏が間違い」というならそれでも結構ですから、並列して扱ってくれないと。一方だけ断罪するのですかね。
首相の本音は何か
本題に戻ると、今回の試みに安倍首相は「その場にいないにもかかわらず、勝手にお詫びすることはできない。私的な勉強会で自由闊達な議論がある。言論の自由は民主主義の根幹をなす」と、とりなしました。首相の本音は「表立って擁護はできない。でもかれらの言っていることにそう間違いはないのではないか」あたりでしょう。
わたしは、首相周辺からの暴言、不規則発言には、本音が相当に、含まれており、安倍政権の体質を判断する材料を提供していると考えます。こうした発言が飛びだすことを通じて政権の本質、体質が見えてくる貴重な機会でもなっています。はっきりいえば、願ってもないチャンスなのです。
そこで問題は、かれらの国家主義的な傾向、右側に傾斜した思想をどう考えるかです。かれら個人がそういう傾向、思想を持つことを止めることはできません。国民世論の傾向、国民の選択がそういう方向に向いているから安倍政権が存続しているという面があります。それがおかしいというのなら、個々の作家、議員、発言を責めることよりも、「国民に訴える。皆さんは間違った選択をしている」とでも、堂々と論陣を張ったほうがすっきりするでしょう。
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