新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ

全国紙の元記者・中村仁がジャーナリストの経験を生かしたブログ
政治、経済、社会問題、メディア論などのニュースをえぐる

不祥事の公表が遅れた企業に厳罰を

2013年11月05日 | 経済

 どこかおかしい企業批判 2013年11月6日 

 食材の虚偽表示といい、メガバンクの暴力団員への融資といい、企業の不祥事が次々に発覚しています。企業は自主的に調査し、処分を発表し、社会やメディアも厳しい批判を浴びせています。「もぐら叩き」に終わらせるのではなく、法的制裁、社会的制裁の方法をもっと工夫しようではありませんか。「いつか来た道」を繰り返してはなりません。

 「いつか来た道」というのは、不祥事が真っ先に発覚した企業がこれでもか、これでもかと袋だたきにあい、事件が他の企業へと広がるにつれ、ニュース・バリューが落ち、だんだんと関心が薄れてしまうことです。企業自身の処分も次第にあまくなり、「皆がやっていることだから」という意識に染まって、事件は終息に向かうという展開を、再現させてはなりません。

 食材の虚偽表示では阪急阪神グループ、暴力団員融資ではみずほ銀行から不祥事が表面化しました。厳しい批判の標的となるのは、当然です。「バレなければいい。この程度のことなら大した問題にならず、うまくやりすごせるかもしれない」というあまい認識が、どう抗弁しても、これらの企業内関係者にあったことは否定できないでしょう。

 この種の企業不祥事では、「ばれなければいい」という意識をなくすことが、もっとも大切なことのように、わたしには思えます。それが不祥事の再発を防ぐことにつながるのです。

 独禁法に、企業の談合、カルテルに対する課徴金減免制度というのがあり、2006年の法改正で導入されました。違反があったことを真っ先に公取委に申し出た企業は課徴金を全額免除するほか、刑事告発の対象にしないのです。二番目に申し出た企業は課徴金を50%、免除する、3番目の企業は30%免除する、という具合に、処罰の程度を軽減する仕組みです。

 早く違反を白状させて事件の解決を急ごうという考えです。うっかり事件を起してしまっても、早く非を認めて申し出たら、罪を軽くするしようということです。企業倫理面からすると、抵抗があるかもしれません。また、この制度が導入された当時は「密告を奨励するのか。日本の法的秩序も地に落ちたものだ」と、かなり評判が悪い考え方でした。この制度を採用してみると、談合事件の摘発が増え、結果として、談合の抑止に役立っているとみられます。

 企業の不祥事が絶えないのは、意図的か意図的でなかったかを問わず、発覚すると、社会的批判を浴びるし、社長や関係者の首が飛ぶだろうと恐れ、ひた隠しをして、時の過ぎ去るのを待とうとするからでもありましょう。そのことが傷を深くし、業界全体に病巣が広げてしまうのではないでしょうか。

 今回は食材偽装の問題にしぼります。偽装は業界全体に広がっていた慣行であり、多くのホテル、レストラン、料理店でも程度の差はあれ、手を染めていた談合のようなものです。社長などはともかく、現場責任者の多くはそのことを認識していたでしょう。真っ先に非を認めたくないので、沈黙を守るか、気がつかれないように改善の措置をとっていたのでしょう。

 「早く白状させるにはどうしたらいいのか」が今回のテーマです。ここで連想したのが、課徴金の減免制度です。談合、カルテルに加わった企業ははっきり把握できるし、公取が課徴金の額を算定するので、この制度は導入しやすかったのでしょう。海外でも同様の制度をとっている国があり、参考にしたのでしょう。

 それを食材偽装事件にどう当てはめるかですね。実際はなかなか難しいでしょう。そう思っていたら、消費者庁の長官が、今回のような景品表示法違反事件について「課徴金制度の導入も検討していきたい」と述べたとの記事を今朝、読みました。公取が担当する談合事件と同質に論じるのは、無理があるにせよ、ひと工夫ほしいところです。「不祥事の調査、公表が遅かった企業ほど、厳しく罰する」「最後に白状した企業には、最も厳しい社内処分要求する」ことが、世論、メディアの報道を含め必要だと思います。

 奈良の近鉄系旅館「三笠」がやはり食材偽装を続けており、ミシュランのガイドにも紹介されていたとのことです。ミシュランを欺くほど、料理の加工技術が達者だったのか、ミシュランもそのレベルなのか、という判断は専門家にまかせます。ミシュランからも何かひと言あってほしいですね。今回の事件は、ミシュランをありがたがる信奉者が多い日本の食通にも、いい反省材料を与えてくれました。

 

 

 

 

 

 



最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
メデイアにも粛清を! (通りすがりの薬剤師)
2017-11-07 21:58:17
朝日のようにガセネタを長年にわたって報道し続けたり、
正当な理由もなく、
報道の公平性の義務を果たしていないようなメディア
世論操作したり誇大記事を書くようなメディアも記者も厳罰が欲しいですね
返信する

コメントを投稿