今年のノーベル経済学賞は3人の米国人学者が受賞しました。この10数年、受賞を米国人が独占する傾向が強まっています。そんなに米国発の経済学が優れているなら、かれらに支えられて米国経済もきっとよいに違いありません。実情はまったく違いますね。実際の経済と経済学は無関係なのですかねえ。
ノーベル賞の創設者であるアルフレッド・ノーベルさんは嘆いていると思いますよ。ノーベル経済学賞はスウェーデン国立銀行の設立300周年の祝賀行事として、設けられました。ノーベルさんの死後、70年以上、後のことです。正式には、ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞といい、ノーベル財団は合同の行事にすることは認めています。賞金は同国立銀行から拠出され、本来のノーベル賞とは、格が違うにせよ、俗にノーベル経済学賞と呼ぶので、受賞者にはおいしいご馳走です。
今年のノーベル経済学賞は、同じ分野(株式、債券など資産価格の実証分析)をテーマとして研究する3人の経済学教授が受賞しました。共同研究もしくは、同着の研究ならまだしも、その手法、思想が異なっており、「誰かの理論が正しければ、他が間違いだったことになる」と、専門家は指摘しています。ひらたくいえば、「どの理論が正しいのか分らないから、いっそのこと、著名な3人に賞をあげてしまえ」ということとか。
物理学賞、化学賞、医学生理学賞では起こりえない前代未聞の事件なのですね。資産価格の決定要因の研究となると、すぐ想像するのはバブル景気の生成、膨張、崩壊です。テーマはタイムリーでも、3人はそれぞれ「効率的市場仮説」、「一般化モーメント法」、「行動ファイナンス」とか、異なる理論を掲げています。「資産価格の決定要因はよく分っていない、といっているにすぎない」とは、ある専門家の批判です。
わたしには理解する力はありません。わたしでも分ることは、経済学賞を受賞したのは、これまでほとんどが欧米系の学者、それも米国人が多く、2000年代(2000-2009年は18人、2010年から13年までは9人(1年に3人まで受賞できる)を数え、米国人の独占傾向が強まる一方だということです。
足元の米国経済はどうですか。リーマンショックを起したのは米国の銀行、証券界、つまり米国発でした。「極端な富の集中」「財政の崖」「あわや国債の債務不履行(デフォルト)」「政府機能の一部停止」「巨額の財政赤字と国際収支の赤字」「ドル安」など、米国経済が病んでいることを示す言葉がしきりと聞かれます。それでも米国経済は世界最強ですから、動揺すれば、世界全体に計り知れない影響が波及します。
経済学が優れていても、「それを使う政治、社会、企業などに問題がある」「経済理論は特定の状況、前提のもとでしか成立しない」「政治、企業、社会、国際環境など、複雑な要素が絡む現実の経済に対しては非力である」などの問題はあるでしょう。
それにしてもです。経済学と経済実態の乖離はひどいと思います。「ノーベル経済学賞と呼ぶのはやめるべきだ」、「経済理論を実際の世界でもっと役立つようにすべきだ」、「欧米流の市場経済を対象にした経済学をいつまでも主流にすべきでない」など、批判は高まっていくことでしょう。
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