国家主導型経済は成功しない
2015年10月17日
安倍首相は企業経営にどこまで口出ししていいのか、分っていないようですね。16日に官邸で経済界の代表らと「官民対話」の会合を開き、越権の発言がなされました。企業は十分に儲かっているのに「設備投資の伸びが十分でない」、「投資拡大の具体的な見通しを示して欲しい」と、強い調子で迫ったのです。「具体的な見通しを」とは、どんな法的な根拠から要求したのでしょうか。
経済的知識が多少でもある人は、耳を疑ったと思いますよ。利益をどう使うか、設備投資にどれだけ回すかは、経営判断の中核であり、首相がどうのこうのという話ではありません。政府が産業、企業に介入する権限を持っている政府規制業種(金融、エネルギー、運輸など)ならともかく、自動車、電機、商社など経営の自由を持っている企業がそんなことを言われたら「首相はひどい錯覚を起こしている」と仰天します。
政府は大株主と違う
ファンドなどの大株主が「多額の内部留保が眠っており、十分な利益を生んでいない」と、批判することはあります。規制権限もなく、株式も所有していない業種、企業に対し、政府のトップであっても、そんな要求をしてはいけません。深入りしすぎると、経営の自由に対する過剰な介入だとして、憲法違反になりかねません。
国家の最高権力者の座についているうちに、「自分はなんでもできるのだ」との錯覚が始まったのでしょうか。ひどい錯覚ですよ。その場に経団連の会長がおりました。「安倍政権の経済担当に過ぎない」、「首相にもっとはっきり物事の是非をいうべきだ」と、よく批判される人です。今回もおとなしく、「法人税率引き下げ、規制緩和など、投資拡大のための環境整備が必要です」と常識論を述べました。
経済界のトップは諌めるべきだ
経済界のトップが勢ぞろいしているのですから、首相を諌め、錯覚をただす発言があってしかるべきでした。強気、強引な首相にたじたじとなっているのでしょうか。残念なことです。
中国の経済運営に対する批判が安倍政権の中枢からよく聞かれます。「国家が経済に介入しすぎる」、「株価が露骨に操作されている」、「為替(人民元の相場)介入がひどい」などです。中国は共産主義を掲げた途上国ですから、強引な国家主導型経済運営がなされているのでしょう。
このところ、日本も日銀の巨額の国債や株式の購入、年金基金を使った株価維持、異次元緩和による円安誘発など、市場に対する政府の介入が広がっています。来年に選挙に向けたGDP(国内総生産)600兆円目標、そのための政策総動員など、安倍政権は政府主導型経済への道を選択しているようですね。そんな時に、今回の発言が飛び出したので心配になってきたのです。
行き詰まった経済政策に焦りか
政府のやるべき仕事と民間に委ねることをはっきり分けなければなりません。政府はデフレ脱却、財政の健全化、税制改正、節度ある金融政策、政府規制の緩和など、民間ではできないことに徹すべきです。
安倍政権の経済政策が効果を上げていないという指摘が増えています。焦りが募るあまり、民間がやるべ分野に口出ししたくなったと、思われますよ。世界経済情勢の悪化、少子化などによる国内の市場収縮を無視して、投資を拡大し、失敗したら安倍政権は企業を救済するのでしょうか。
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