新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ

全国紙の元記者・中村仁がジャーナリストの経験を生かしたブログ
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エンブレム撤回で関係者を首に

2015年09月01日 | 社会

 

腹立たしかった解決能力の鈍さ

2015年9月1日

 

 東京五輪エンブレムの盗作、模倣騒ぎにやっとケリつきましたね。素人の常識的な判断力が、業界関係を含む専門家の見苦しい感覚に勝りました。盗作という犯罪的行為に等しい作品の使用停止を大会組織委員会(JOC)が決めました。今ごろになってやっと、ですね。


 これはジャパン・プロブレムです。つまり決められない日本、決めない日本、責任逃れする日本です。こんなに分りやすい問題で、政府関係者がこれほど手こずる有様です。もっと込み入った問題の場合、果たして解決できるのでしょうか。


 ブログで2度(8月6日、19日)、この問題をとりあげてから知人、友人のすべてが「盗作、模倣、転用に違いない」、「早く作品を撤回すべきだ」、「日本の恥さらしだ」という感想を寄せてきました。今回の決定は当然です。遅いですね。政府、関係組織の決断力の鈍さ、遅さに落胆しております。


これはジャパン・プロブレム


 新国立競技場も同じでした。「計画を白紙に戻し、ゼロベースで見直す。入札をやり直す」ですね。エンブレムも同じ構図です。日本の能力が低下しているとしか思えません。計画の立案能力、計画に問題が生じた場合の解決能力、関係者の責任の取り方など、日本の総合的な能力が試されたのです。落第点でした。


 五輪組織委員会はみっともなかったですね。今回の決定直前の8月28日、財務次官経験者の事務総長、デザイン審査委員会代表が記者会見、「原案はオリジナルだ(模倣ではない)」などと述べました。2人はどう説明し、詫びるのでしょうか。国民をだまし討ちし、失敗しました。事務総長の撤回説明はくどくて、歯切れが悪かったですね。ひどすぎます。


業界から去るべき人物


 審査委員代表はグラフィックデザイナーといいます。新たな選定には、委員を総入替えするとともに、この代表はこの業界から去るべきです。事件が明るみになるや早々と「問題はないと認識している」と態度表明した組織委員会の担当責任者も同罪です。国際オリンピック組織委会(IOC)担当部署も自信満々で、「余計ことを言うな」をいわんばかりでしたね。説明がほしいですね。


 恥をさらした張本人は、大手広告会社出身の佐野研二郎という男です。盗用が発覚し取り下げた作品、盗用が疑われている作品が数件以上もあり、おまけに作品の展示方法の事例(空港や駅などでの活用例)までネット上のサイトから転用しています。五輪エンブレムだけが結果として偶然、似てしまったのではなさそうですね。常習犯ですね。


 ウェッブ上には、デザインを含め、無数のジャンルの映像、画像を自由に検索できるサイト(たとえば、Pinterest)があります。そこから使えそうな作品を選び、細工を加えていたのでしょうか。この本人もデザイン事務所を解散し、業界から足を洗うべきでしょう。


業界ぐるみの体質


 おなじようなことをしているデザイナーも多数、というより無数にいることでしょう。というより、この業界はデザイナーばかりでなく、評論家、法律問題(商標、著作権)の専門家、ジャーナリストを含め、盗用、転用、模倣を許容する体質に染まっており、それを不思議と思わず、疑問を持たない構造になっているのでしょうか。業界ぐるみで猛省が必要です。


 今朝(9月1日)の朝刊を読んでいましたら、著名な(著名らしい)デザイン評論家が盗用男を弁護していました。「ベルギーのロゴマーク(盗用の原案とされる)とデザインの方法が違うのでオリジナルと思う」というのです。知的財産法が専門の大学教授は「今回の騒ぎは、国立競技問題も絡み、過熱してしまったとしか、思えない」と同情的なのです。


画像検索技術の進化を悪用


 同じ新聞の一日前には、ジャーナリストが「騒動の背景に画像検索技術の進化がある。ワンクリックで情報が瞬時に検索できる。もの作りのプロセスも変わった。この手軽さがパクリや違法なコピー・ペーストを氾濫させた」と書いていました。そうでしょうね。「われわれは白紙状態から何かを生み出せるのではない。すべての発想、選択は経験の積み重ねの上にある」と。これもそうでしょう。


 芸術でもスポーツでも科学でも、人間の営みのほどんどは、他者の先行事例、成功事例、業績、成果を踏まえています。問題はそうした積み重ねの上に、自分のオリジナリティー(独創性、独自性)をどう付加するかにあります。検索は自分の作品に似ており、後に他人の権利侵害にならないかを確認するためにも使うべきです。この男は使用法を間違えたのです。組織委の事務局も、ろくにチェックしなかったのではないですか。

 

 そっくりさん騒ぎが明るみになったのに、NHKでしたか、報道の図柄に使っているのを見かけました。新聞広告、テレビCMにもすでに登場しているのではないですか。関係企業も頭を抱えています。これらの中止、撤回、修正、さらに盗用された側からの損害賠償請求など、どこにその費用を要求するのか。だから早く手を打つべきだと申し上げていたのです。

 

 

 

 







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