新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ

全国紙の元記者・中村仁がジャーナリストの経験を生かしたブログ
政治、経済、社会問題、メディア論などのニュースをえぐる

短篇=自民総裁選の無競争を嘆く

2015年08月27日 | 政治

 

日米に政治的エネルギーの落差

2015年8月28日

 

 無競争、無投票というより、無気力ですね。9月の自民党総裁選のことです。対抗馬がでない情勢です。総裁選はせっかく政治への関心を高められるのに、その機会を放棄するのですからね。


 新聞記事の見出しに「無投票が濃厚」とありました。政治への無関心を誘い、「無党派層の拡大が濃厚」が本当のところでしょう。自民の総裁選、野党の代表選は、党の活性化と、有権者の関心をかきたてるのに役立ってきました。


 理由はいろいろあるのでしょう。安倍首相の再選は動かない。安保法制の大転換、デフレ脱却のためのアベノミクス(経済政策)に全力投球している時に足を引っ張るのはまずい。落ちてきた内閣支持率もまだ致命的なレベルではない。久しぶりの安定政権なのでじっとしていよう。それよりも大きな理由は、出馬して安倍首相の心象を悪くしたら、後でほされ、冷や飯を食わせられるから。これでしょうね。挑戦する気概のなさです。


民主党に批判される珍事


 珍事は、民主党の岡田代表に「リベラルの人もいるでしょう。きちんと手を上げて、議論してもらいたい。日本の政治にとってそれがいいことだ」と、言われたことです。民主党に的を突かれるようでは、情けない。自民党内にも、リベラルな安保法制のあり方、超金融緩和への批判、財政刺激への異論、社会保障制度の合理化などで異論はあるはずで、議論すべきテーマは多いのです。


 今、米国では、2016年11月の大統領選に向け、民主、共和両党の候補指名の争いが本格化しております。オバマ大統領の退任は決まってますから(3選禁止)、「われこそは」の激烈な競争になります。


 指名争いと総裁選の性格をはじめ、政治制度は日米でまったくことなります。米国では、選挙資金もほぼ無制限に集められます。2012年の大統領選、上下両院選挙では、史上最高の4800億円が寄付されました。掲げる政策、政治的センス、才覚が光っていれば、必要な選挙資金は集められます。


州知事は大統領への道


 そうだとしても、大統領候補、首相候補という政治のトップを選ぶという意味では共通点があります。日米の政治的エネルギーの違いには驚きます。米国駐在の経験が長かった元ジャーナリストと、総裁選を話題にしていましたら、「大統領選の指名争いに、現職を含め、州知事の経験者が何人出ているか数えてみたらいい。そこにエネルギーの源泉がある」と、指摘されました。


 有力候補、人気目当ての候補、売名候補を含め、両党で名乗りを上げている候補者が20数人程度、民主は数人、共和は20人といったところでしょうか。このうち州知事および経験者は、民主2人、共和10人、合わせて12人です。共和は指名争いに挑戦している政治家の半数が州知事経験者です。州知事は大統領への有力な道なのでしょう。


県知事は政治的な野心を抱け


 日本になじみのある大統領として、レーガン(カリフォルニア)、カーター(ジョージア)、クリントン(アーカンソー)らが知事出身です。今回も、共和党の有力候補の1人であるブッシュ(親と兄が大統領に就任)は元フロリダ州知事です。州知事時代の統治の経験、財政運営の経験、産業や地域振興の経験が、国家を統治する際に生きてくるのです。地方経験者による中央政界の独占の打破も狙いです。


 日本にも同じ位の数の県知事がおります。日本では、首相を目指すなら、まず国会議員になる必要があり、米国の直接選挙とはまるで違います。そうであっても、知事を経験してから、国家のトップを目指す政治家が増えれば、日本の政治も変わってくるでしょう。県知事は直接選挙で選ばれ、多選されるほど、地位が安泰になりますので、国会議員になりたくないのでしょう。政治的な野心がないのですね。






最新の画像もっと見る

コメントを投稿