「あれから40年」や「綺麗ですね」と女性客を褒めちぎった後に、「私は女性を見る目が無いのです」とオチをつけるのは、漫談家の綾小路きみまろさんです。
カツラと扇子、それに背広に燕尾服というお馴染みの出で立ちで、中高年の悲哀を独特の口調でユーモラスに語り、中高年のアイドルと言われ団塊世代に圧倒的な人気を誇っていらっしゃいます。
今でこそ大人気のきみまろさんですが、漫談家としてデビューしてからしばらくはなかなか芽が出ず、キャバレーに勤めたり同郷の森進一さんや小林幸子などのコンサートの司会を務めていたり、その頃、サービスエリアで休息中の観光バスに自作の漫談テープを配布していたのだそうです。
こうした地道な努力のかいがあって少しずつ人気が出て、今の大ブレイクになったとのことです。
きみまろさんに限らず、今大活躍しているタレントの下積み時代の話は枚挙にいとまがありませんし、それはタレントに限ったことではありません。
1か月前に初めて「突発的な仕事に先手を打つ 残業ゼロのビジネス整理術」という本を出した私ですが、この1か月は時間を見つけては書店めぐりをしています。東京中心に、仕事で地方に行った時には必ずその土地の大きな書店に足を運び、ご挨拶をしています。
しかし、数々の書店を回る中で感じたことは、お客として書店に行った時と版元(出版社)から来た者として訪問した時との対応があまりにも違うということです。
お店で書棚を整理されている人に「すみません」と声をかけた瞬間は、ものすごく感じよく対応してくださる書店員も、「版元の○○からまいりました。ビジネス書の担当の方はいらっしゃいますでしょうか?」と言った瞬間に「私ですが、用はありません」と激しい口調で言われたり、「事務所にいるから、そっちに行って」と怒ったように言われることが少なくありません。
勿論、感じよく対応してくださる方もいらっしゃいますし、本の内容について簡単な意見交換をしてくださったり、本の売れ行き状況を調べてくださる方もいらっしゃいましたが、そういう対応をしてくださる方はごく一部なのです。
こうしたことから、私は書店全体の傾向として、お客には丁寧に対応をするけれど、営業としてやってくる版元に対してはぞんざいな対応をする人が結構多いのではないかという印象を持っています。
相手がお客でないとわかった瞬時に、それまでと全く異なる対応をされるため、最初のうちはかなり面喰いましたが、その後いろいろなところを回る中でどちらでも概ね同じような傾向があることがわかり、最近ではそのこと自体にはすっかり慣れてしまいました。しかし、同時に正直なところ「もうこの書店では、今後二度と本を買いたくない」という気持ちにもなってしまいます。
「今日の私は版元の人間として来ているけれど、今後お客としてこのお店に来ることもありえるのに・・・書店の人はそこのところをどのように考えているのだろう?」と聞いてみたい気持ちにもなります。
もしかすると、「営業の一人くらい、大した問題ではないよ」と思っているのかも知れませんが、でも何事もこうした小さなことの積み重ねで成り立っているのです。
「立場が変れば、顧客と営業は入れ替わる」、基本的なことだと思いますが、案外このことを軽んじている人が多いのだと、今回身を持って感じました。
少なくとも自分自身はこのことを肝に銘じて、今後も小さなことでもおろそかにすることなく、仕事に励もうと思っています。
(人材育成社)