昨晩は久しぶりに暖房に頼らずに就寝しました。日中はTシャツでも過ごせるほどの暖かさで、勘違いした桜が咲いてしまうのではないかと思ったほどでした。
ところで、今日2月19日はヨーゼフ・シゲティの祥月命日です。
ヨーゼフ・シゲティ(1892〜1973)はハンガリー出身のヴァイオリン奏者で、日本ではヨゼフ・シゲティという表記も多く見られています。
ヨーゼフ・シゲティは1892年に、ハンガリー・ブダペストで誕生しました。父親はカフェのオーケストラの首席奏者で、叔父もコントラバスを弾くなど、音楽家の家系でもありました。
ヨーゼフ少年は父親から音楽の手ほどきを受け、ブダペストの私設音楽院予備校で歌劇場のオーケストラの団員にヴァイオリンを習いました。1904年にはブラームスの友人でもあったヴァイオリニストのヨーゼフ・ヨアヒム(1831〜1907)のもとを訪れ、ベートーヴェンの《ヴァイオリン協奏曲ニ長調》を演奏して評価されています。
1906年にはロンドンのベヒシュタイン・ホール(現ウィグモア・ホール)でイギリス・デビューを飾り、1907年には作曲家でピアニストのフェルッチョ・ブゾーニ(1866〜1924)の知己を得て度々共演するようになりました。しかしシゲティは1913年に結核を患ってしまい、一時演奏活動を停止することを余儀なくされてしまいます。
1917年にジュネーヴ音楽院の教授として音楽活動を再開して1924年までその任に当たったシゲティは、在任中の1923年にヴァイオリニストで作曲家のウジェーヌ・イザイ(1858〜1931)から《無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番》を献呈されました。1924年にはプラハの「新しい音楽のための国際会議」音楽祭で同郷の指揮者フリッツ・ライナー(1888〜1963)の指揮でセルゲイ・プロコフィエフ(1891〜1953)の《ヴァイオリン協奏曲第1番》を演奏して、作曲者から
「シゲティ以上に、この曲を素晴らしく弾けるヴァイオリニストは他にいない」
と言わしめたといいます。
1925年に指揮者のレオポルド・ストコフスキー(1882〜1977)の招きで渡米したシゲティは、1940年にアメリカに移住し、1951年にはアメリカの市民権を取得しました。また1930年代からは世界各国を精力的に回り、1938年にはエルネスト・ブロッホ(1880〜1959)から、1940年にはフランク・マルタン(1890〜1974)からヴァイオリン協奏曲を献呈されました。
シゲティは1931年に初来日を果たし、その翌年にも日本に来訪しました。1960年にアメリカからスイスに居を移してからは欧米諸国のヴァイオリニストだけでなく、海野義雄や久保陽子、潮田益子、前橋汀子、深井硯章(ひろふみ)といった多くの日本人奏者も指導したシゲティは、1973年の2月19日にスイスのルツェルンで死去しました(享年80)。
シゲティのレパートリーは、バッハから近代まで広範囲にわたりました。その中でも特にベートーヴェンの演奏には定評があり、録音だけでなくベートーヴェンのヴァイオリン作品についての著作も遺しています。
そんなわけで、今日はシゲティの演奏によるベートーヴェンの大曲《ヴァイオリン協奏曲ニ長調》をお聴きいただきたいと思います。20世紀の名指揮者の一人ブルーノ・ワルター(1876〜1962)との共演による、1932年の録音でお楽しみください。