共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

御冥福を…

2019年10月28日 23時41分00秒 | 日記
今日は小田原の放課後子ども教室の日のはずだったのですが、土曜日に開催された運動会の代休でありませんでした。それはそれでいろいろとやることがあったので、今日はそれらを済ませてしまうことにしました。

ひと心地ついた時にスマホにニュースが着信し、女優の八千草薫さんが今日亡くなられたということを知りました(享年88)。そう言えば、最近あまり某健康サプリメントのCMに出てみえないな、とは思っていたのですが…。

八千草薫さんと言えば数々の名作に出演されました。鮮烈に覚えているのが向田邦子脚本のドラマ《阿修羅のごとく》ですが、個人的に一番印象深かったのは20代の頃に撮影されたオペラ映画《蝶々夫人》です。

この映画は1955年に日本とイタリアとの合同制作のものです。始めにスピンオフ的に蝶々さんとピンカートンの遊郭での出会いの場面があったり、その分本編が若干省略されたり、何故か英語のナレーションが入っていたりしますが、全体的にはプッチーニのオペラ《蝶々夫人》をほぼ全部映画化したものとなっています。

ともするとオペラの舞台では声を優先するあまり、正直言ってとても18の娘に見えないような貫禄たっぷりの蝶々さんが出てきたり、決してイケメンとは言い難い巨漢のピンカートンが出てきたりしてゲンナリすることがあります。しかし、この映画は声を別録りしたものなので画像はとにかくビジュアル重視。主役の蝶々さんを演じるのは、当時23歳の八千草薫さんでした。

演出も、外国の劇場だとかなりヘンテコリンな家や着物衣裳が登場したりするのですが、この映画は八千草薫さんを始めとした宝塚歌劇団の面々が登場している(よく見ると合唱の中には寿美花代さんがいたりする!)こともあって、当たり前ですがセットの日本家屋の建付けから衣裳の着物の着付け、日本髪の結い上げまでバッチリ。蝶々さんとピンカートンとの婚姻の宴では花咲く庭で皆が踊ったりするのですが、当然ながら日本舞踊の所作も完璧です。

そして何より特筆すべきは、輝くばかりに美しい八千草薫さんの蝶々さんです。



キリスト教に改宗したことを皆に責められ、誰もいなくなってしまった屋敷の庭でピンカートンと歌う『愛の二重唱』の場面はこの上なく美しく、感動的です。

また、名アリア『ある晴れた日に』では



悲しみを胸の内に押し込めながら夫ピンカートンの帰る日を夢見る健気な蝶々さんを演じています。

別録りの歌唱に合わせての撮影なので、キャストは全員口パクで撮影しています。しかし映画を観ていて驚くのは、八千草さんをはじめとするキャスト全員の口の動きが、当てられたイタリア語の歌唱とピッタリと合っていることです。これは後に御本人が仰っていたのですが、本格的にではなかったにせよ、現場で流された音声に合わせて実際に歌いながら撮影されたのだそうです。そのために、オペラの歌詞をほぼ全部覚えられたのだとか。こうした点からも、当時宝塚歌劇団トップ女優たる八千草さんのプロフェッショナルとしての矜持が窺えます。

その後も数々の作品に出演された八千草薫さんですが、私が個人的に一番の名作は?と聞かれたら、迷わずこの映画を答えます。

今でも



DVD付きのブックで入手することが出来ますので、興味のある方は是非御覧になってみて下さい。

生前の御活躍を偲び、ここに謹んで御冥福を御祈念申し上げます。

合掌。

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