今日はバレンタインデーでした。皆様、収穫はありましたでしょうか?
十三世片岡仁左衛門二十七回忌追善ということで、昼の部では《菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)》から『加茂堤』『筆法伝授』『道明寺』が、私が行った夜の部では片岡我當主演の《八陣守護城(はちじんしゅごのほんじょう)》、坂東玉三郎と中村勘九郎とによる《羽衣》、尾上菊五郎・市川雀右衛門・市川時蔵・中村梅玉等による《人情噺文七元結(にんじょうばなしぶんしちもっとい)》、中村梅玉・片岡秀太郎・尾上松緑の三名による《道行故郷の初雪(みちゆきこきょうのはつゆき)》がかけられました。十三世追善ということで、ロビーには
十三世仁左衛門の遺影が置かれていて、香炉からは仄かに香の薫りが漂っていました。
目にも鮮やかな赤い提灯と大きな定式幕が目を引きます。それを眺めながら頂いたチケットの席に座ってみたら
何とほぼド真正面!凄まじくいい御席だということに気づいて、何だか恐縮してしまいました。
先ずは《八陣守護城》が始まりました。
各協賛企業から贈られたいろいろな緞帳の紹介もされていて、観客がその華やかな有様に見入っていました。
私はと言うと、バレンタインデーにはあまりにも勿体無いくらいだったのですが、知り合いの方から突然歌舞伎の招待状を頂いて、実に十数年ぶりに木挽町の歌舞伎座までやって来ました。
今月の二月大歌舞伎は
十三世片岡仁左衛門二十七回忌追善ということで、昼の部では《菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)》から『加茂堤』『筆法伝授』『道明寺』が、私が行った夜の部では片岡我當主演の《八陣守護城(はちじんしゅごのほんじょう)》、坂東玉三郎と中村勘九郎とによる《羽衣》、尾上菊五郎・市川雀右衛門・市川時蔵・中村梅玉等による《人情噺文七元結(にんじょうばなしぶんしちもっとい)》、中村梅玉・片岡秀太郎・尾上松緑の三名による《道行故郷の初雪(みちゆきこきょうのはつゆき)》がかけられました。十三世追善ということで、ロビーには
十三世仁左衛門の遺影が置かれていて、香炉からは仄かに香の薫りが漂っていました。
新築した歌舞伎座に入ると
目にも鮮やかな赤い提灯と大きな定式幕が目を引きます。それを眺めながら頂いたチケットの席に座ってみたら
何とほぼド真正面!凄まじくいい御席だということに気づいて、何だか恐縮してしまいました。
先ずは《八陣守護城》が始まりました。
猛将・加藤清正をモデルとした佐藤正清を演じたのは十三世仁左衛門の御長男の片岡我當。御歳なこともあって座ったまま、些か呂律にも不安のある正清でしたが、それでも佐藤正清=加藤清正の風格は何者にも替え難いものがありました。十三世仁左衛門も齢九十で正清を勤めたということですので、その追善には相応しい演目でありました。また、雛衣を演じた中村魁春の琴の演奏も素晴らしいものでした。
次の《羽衣》は、三保の松原の松の梢に掛けられていた天乃羽衣を持ち帰ろうとする伯竜が、天に帰るために羽衣を返してほしいと嘆く美しい天女に心打たれて羽衣を返し、その返礼に天女が月の満ち欠けを表す月宮殿の舞を舞って観せ、やがて舞いながら天に昇っていく…という能の演目による舞踊劇です。天女を演じる玉三郎は、まるで床から浮いているのではないかと思うくらいの滑るような裾捌きでの花道からの登場で、そのあまりの所作の美しさに客席からどよめきのような溜息が漏れていました。
若々しい勘九郎の伯竜と『動く博多人形』と称される玉三郎との息の合った舞踊は、観ていて安心感があります。かつてのやんちゃ坊主な勘太郎ちゃんも、大きくなったものです。
《文七元結》が始まるまでの長めの幕間には
《文七元結》が始まるまでの長めの幕間には
各協賛企業から贈られたいろいろな緞帳の紹介もされていて、観客がその華やかな有様に見入っていました。
さて、いよいよ《文七元結》が始まりました。
この演目は三遊亭円朝の落語を基にした、笑いあり涙ありの心温まる世話物の傑作です。尾上菊五郎の左官長兵衛と市川雀右衛門の女房お兼との丁々発止のやり取りでは、客席から笑いが起きていました。菊五郎は、こうした長兵衛や魚屋宗五郎といったちょっと可笑し味のある役をやらせたら随一の存在です。また、どちらかというとお姫様やお上臈といった役どころの多い雀右衛門ですが、お兼のような下町のおかみさんもなかなか味があっていいものです。
時蔵演じる、長兵衛の娘お久の身請け先の女将である吉原遊郭角海老女房お駒はきっぷの良い人情味に溢れる女性です。時蔵のお駒はその居住いや声の張りに大店の女将の風格が漂い、舞台が締まります。あまり出番の多くないものの、舞台終盤で登場する文七の主人和泉屋清兵衛の市川左團次や鳶頭伊兵衛の中村梅玉も存在感十分で、幕と同時に大きな拍手が沸き起こっていました。
時蔵演じる、長兵衛の娘お久の身請け先の女将である吉原遊郭角海老女房お駒はきっぷの良い人情味に溢れる女性です。時蔵のお駒はその居住いや声の張りに大店の女将の風格が漂い、舞台が締まります。あまり出番の多くないものの、舞台終盤で登場する文七の主人和泉屋清兵衛の市川左團次や鳶頭伊兵衛の中村梅玉も存在感十分で、幕と同時に大きな拍手が沸き起こっていました。
最後の《道行故郷の初雪》は、近松門左衛門の名作『冥途の飛脚』の梅川・忠兵衛の新口村道行に基づく舞踊色の濃い演目です。追われるみである二人の身の哀れを美しく表現し、艶のある清元(きよもと)の唄と三味線の調べにのせた味わい溢れる一幕です。尾上松緑演じる才蔵とはぐれた万才の太夫の舞踊が束の間の華やぎを添えますが、それがかえって死出の旅路を行く梅川と忠兵衛の運命の悲哀を助長させます。
最後は降りしきる雪の中、忠兵衛の父・孫右衛門に会いたくても会えない辛さを堪えるところで幕となります。忠兵衛も十三世が得意とした役どころですので、追善狂言としては相応しいものとなっていました。
奇しくも、新装した四代目歌舞伎座に初めて足を踏み入れることができました。こんなチャンスを頂けたことは、この上ない幸せなことでした。
考えてみれば、一時期は一幕見席で観劇していたこともありましたから、これを期にまた歌舞伎座に足を運んでみようかと思うようになりました。また折を見て、歌舞伎座に来てみたいと思います。