日本列島を散々引っかき回した台風10号は、今日の昼頃に熱帯低気圧に変わりました。とりあえず明日以降の小学校授業に影響はなさそうですが、相変わらず小田急小田原線は盛土流出のため伊勢原〜秦野駅間で運転見合わせが続いています。
ところで、今日は久しぶりに誕生日シリーズをやってみようと思います。今日9月1日はパッヘルベルの受洗日です(洗礼を受けた記録のある日なので、誕生日自体は8月末頃と思われます)。
ヨハン・パッヘルベル(1653〜1706)はバロック期のドイツの作曲家であり、南ドイツ・オルガン楽派の最盛期を支えたオルガン奏者で、教師でもある人物です。宗教曲・非宗教曲を問わず多くの楽曲を制作し、コラール前奏曲やフーガの発展に大きく貢献したところから、バロック中期における最も重要な作曲家の一人とされています。
パッヘルベルの音楽は、
ヨハン・ヤーコプ・フローベルガー(1616〜1667)
ヨハン・カスパール・ケルル(1627〜1693)といった南ドイツの作曲家や、
ジローラモ・フレスコバルディ(1583〜1643)などのイタリアの作曲家、さらにはフランス・ニュルンベルク楽派などの作曲家から影響を受けていたとされています。パッヘルベルの音楽はどちらかといえば技巧的ではなく、たとえば
北ドイツの代表的なオルガン奏者であるディートリヒ・ブクステフーデ(1637〜1707)のような大胆な和声法も用いず、旋律的・和声的な明快さを強調した明快で単純な対位法を好んで用いました。
パッヘルベルの作品は生前から人気が高かったため師事する弟子も多く、またドイツ中部・南部の多くの作曲家の手本となりました。現在ではどうしても《パッヘルベルのカノン》のみで有名になっていますが、《シャコンヌ ヘ短調》や《トッカータ ホ短調》などのオルガン曲、ブクステフーデに捧げた鍵盤楽器用の変奏曲集《アポロンの六弦琴》などが知られています。
パッヘルベルはバッハ家とも親しく交流していて、ヨハン・ゼバスティアン・バッハの長兄のヨハン・クリストフ・バッハ(1671〜1721)の家庭教師をしていたこともありました。その関係でヨハン・クリストフはパッヘルベルの楽譜を沢山所持していましたが、その楽譜をヨハン・ゼバスティアン少年がこっそり写譜してパッヘルベルの二重フーガなどを会得した逸話は有名です。
パッヘルベルのことをネットで調べようとすると、どうしても《カノン》に関することがズラ〜っと出てきてしまいます。しかし、パッヘルベルの真価を問うなら、どうしてもオルガン作品を避けては通れません。
パッヘルベルのフーガやシャコンヌといったオルガン作品は決して派手なものではありませんが、内に秘めた感情を切々と歌っていく美しさに満ちています。特にその美しさを味わうことができるのが、変奏曲であるシャコンヌです。
一番有名なのは《シャコンヌ ヘ短調》ですが、今回は《シャコンヌ ニ短調》をお聴きいただきたいと思います。ベルンハルト・シュナイダーのオルガンで、バッハに多大な影響を与えたパッヘルベルのオルガン作品をお楽しみください。