今朝、厚木はかなり凉しくなったので、溜まっていた洗濯物を一気に済ませてしまいました。今週末は秋雨前線の南下の影響で天候が悪そうですが、これで季節が秋へと進んでくれるのなら大歓迎です。
ところで、今日9月15日はヴェーベルンの祥月命日です。
アントン・ヴェーベルン(1883〜1945)はツェムリンスキー、シェーンベルク、ベルクらに続く『新ウィーン楽派』の中核メンバーで、1900年代初頭の無調音楽、12音技法の開拓者と言われる作曲家です。
ヴェーベルンの最期は、実に悲劇的なものでした。
1945年に、終戦後に作曲活動を再開する思惑からウィーンを去ってザルツブルク近郊のミッタージルの娘の家に避難していたヴェーベルンでしたが、娘婿が元ナチス親衛隊で、当時は闇取引に関与していたのが悲劇の引き金となりました。同年9月15日にヴェーベルンがタバコを吸おうとベランダに出て火をつけたところ、それがオーストリア占領軍の米兵に闇取引の合図と誤解され、なんとその場で射殺されてしまったのです。
非業の最期を遂げた音楽家は数多居れど、射殺されてしまったのは後にも先にもヴェーベルンだけでしょう。もし戦後に活動を再開していたらどんな音楽を世に送り出してくれたのだろうかと思うと、残念でなりません。
そんなヴェーベルンの祥月命日にご紹介するのは『6声のリチェルカーレ』です。これは、
バッハとヴェーベルンとの時を超えた『共演』とでも言うべき作品です。
『6声のリチェルカーレ』の原曲は、1747年にバッハがフリードリヒ大王の前で即興演奏し、 その後いくつかの楽曲をまとめて《音楽の捧げ物》として出版した中の1曲です。 これをウェーベルンは小編成の管弦楽曲として、亡くなる10年前の1935年に編曲しました。
原曲では
いわゆる『王の主題』とよばれるテーマを6声部フーガで展開していきます。一方ヴェーベルンの編曲では、
主題を細かい動機に分割して様々な楽器に割り当て、 まるでパッチワークのように音楽が進行していきます。
かつて私も演奏した(なんならヴィオラのトップでソロまで弾いた)ことがありますが、メロディが流れずコラージュのように出たり消えたりするので油断できません。しかも聴衆にはきちんとメロディが流れているように聴こえなければならないので、オーケストラ全体のアンサンブルテクニックが最重要になるという難曲でもあります。
そんなわけで、ヴェーベルンの祥月命日である今日は『6声のリチェルカーレ』をお聴きいただきたいと思います。アントネッロ・マナコルダ指揮によるフランクフルト放送交響楽団の演奏で、ヴェーベルンの手腕で斬新な姿となったバッハの細密なフーガをお楽しみください。