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お祝い会

 就職活動で忙しかった娘が、内定をもらい、一段落ついた報告をするため家に帰って来た。昨今の経済事情の悪化をまともに受けた就職活動であったため、かなり苦労をしたようだが、自分の意図した会社に入れる見通しができたことは、特別就職活動を応援したわけでもない私でも、素直にうれしいと思っている。会社組織に属したことがない私では、何もアドバイスできることはないが、娘なりに自分の将来を考えた挙句の選択であるのだから、せめて労をねぎらうことくらいはしてやらなくてはいけないだろうと、小宴を開くことにした。
 息子にも声をかけたが、都合がつかず、ごく内輪の宴になってしまった。就職活動でかなり痩せてしまった娘に少しでも精がつくようにと選んだ場所は、家から近いところにある鰻屋。市内では一番の老舗であり、私も子供のころから何度も行ったことがある店である。

 

 通されたのは別棟。この店の本宅は父が建てたものであるが、この別棟だけはずっと以前に建てられたものであり、父は屋根の葺き替えを何度かしたことがある。私は久しぶりにこの店を訪れたが、この別棟に入ったのは初めてだった。よく見ればかなり老朽化しいてはいるものの、国道沿いの店にしてはなかなかの風流をかもし出していて、面白い。

 

 電話で予約を取っておいたが、さすがに父の性格を熟知している店主だけあって、さほど待たずに料理が運ばれてきたのには驚いた。

  

 鰻肝も肝吸いもおいしかった。残念ながら、白米を食べない私ではどんぶりをかきこむことはできないので、上にのったかば焼きだけを食べたが焼き加減もちょうどよく、おいしかった。私以外の者は、全員ぺろりと平らげてしまった。さすがの私も食べたいな、と思ったが、必死で我慢した・・。

 娘の就職先が決まって以来、もうこれで家に戻っては来ないのか、と少々寂しい気持ちに襲われがちだった私だが、娘の元気そうな顔を見て、いつも通りのおしゃべりを聞いていたら、そんな憂愁も吹き飛んでしまった。
 ただ、「辛いことがあったら、いつでも家に戻ってこいよ、待ってるぞ」と伝えようとは思っているが、娘の晴れやかな顔を見ていると、余計なことを言わない方がいいかな、と少々迷っている・・・。
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