じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

鈴木るりか「さよなら、田中さん」

2018-04-21 18:56:33 | Weblog
☆ 作者は中学2年生だというから13歳か14歳だと思う。その作品に不覚にも泣かされてしまった。

☆ 鈴木るりかさんの「さよなら、田中さん」(小学館)から表題作を読んだ。

☆ 主人公は小学6年生の「僕」、中学受験を目指して連日の塾通い。体が小さくて泣き虫。そして要領が悪いのか濡れ衣を着せらてたびたび同級生の女の子たちに取り囲まれてしまう。そんなとき助けてくれるのが田中さん。

☆ 田中さんは母子家庭でお母さんが工事現場で一生懸命に働いている。生活は豊かではないが、田中さんも田中さんのお母さんもそんなことは気にしない。明るく楽しく力強く生きている。

☆ 一方の「僕」は裕福な家庭。何よりもお母さんのプライドの高さが目につく。「僕」は進学校に合格し、母親の自尊心を守らなければならない。しかし、思うようにうまくはいかない。

☆ 母の言葉に傷つき絶望したとき、田中さんのお母さんの言葉が飛び出す。「蟻のように働き、犬のように食らう」と笑ったお母さん。「僕」をじっと見つめてこう言った。「もし死にたいくらい悲しいことがあったら、とりあえずメシを食え。そして一食食ったら、その一食分だけ生きてみろ・・・」

☆ 乾いた心に沁みる言葉だ。胸が熱くなった。

☆ 若い人には若い人にしか書けない文章がある。とても良かった。感動した。
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松本清張「理外の理」

2018-04-21 12:21:28 | Weblog
☆ 松本清張の短編「理外の理」(「松本清張傑作短篇コレクション」文春文庫所収)を読んだ。

☆ 売れなくなった文芸雑誌。新しい編集長は執筆者一新の方針を出す。当然常連の執筆者から不満は出たが、社の方針として乗り切った。1人の老人を除いては。老人は原稿の持ち込みを続ける。生計がかかっているだけに必死なのだ。持ち込みは遂に12回を数え、最後の作品は社への怨念ともとれるようなものであった。それで、あきらめるという。何はともあれ、老人との関係が切れるとホッとした担当者。老人とある実験をすることになるのだが・・・。

☆ 「理外の理」とは普通の道理や常識では説明できないことを言う。思わず読み進めてしまうのは筆の力だろう。
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「黙れ!」事件

2018-04-21 10:00:31 | Weblog
☆ 京都新聞は「凡語」のコラムで1938年(昭和13年)の「黙れ事件」を取り上げていた。

☆ 衆議院の国家総動員法委員会、陸軍省として佐藤賢了中佐(のちに中将まで昇任)が説明に立っていたがそれがあまりに長時間にわたったため、国会議員たちがヤジを飛ばした。それに対して中佐が「黙れ!」と一喝した事件。その後陸軍大臣より陳謝はあったものの中佐に対するお咎めはなかった。

☆ 「凡語」はこの事件を引用して、現役自衛官による国会議員罵倒事件に懸念を述べている。

☆ 記事によると、その自衛官は国会議員を誰何し、自らの身分を明かしたうえで罵倒したという。何か幕末の人斬りを思い浮かべる。この事件で国会議員が委縮することはないであろうが、こうした行為はテロリズムの温床ともなりかねない。

☆ 自衛官個人の問題なのか、それとも背後関係があるのか。戦前は軍人と民間人が結託し、それがテロ、クーデターへと発展した。単なる個人の意見ではすむまい。
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