じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

「柘榴坂の仇討」

2018-04-23 23:34:51 | Weblog
☆ 映画「柘榴坂の仇討」(2014)を観た。原作は浅田次郎さんだ。

☆ 主人公・志村金吾は剣術の腕をかわれ井伊直弼の籠周りの警護を下命される。1860年3月3日、桜田門外の変。主君を守り切れなかった金吾は、それから市井に身を潜め刺客を追う日々を過ごす。

☆ 刺客も多くは死に、残るは一人。佐橋十兵衛を残すのみとなった。。彼もまた車夫となり、死に遅れた身を恥じて生きながらえていた。桜田門外の変から13年。遂に金吾は佐橋の居所をつかむ。時代は明治となり、もはやサムライ階級は存在していない。

☆ 十兵衛が死にそびれた柘榴坂、そこで13年前に時が止まってしまった二人が刃を交える。

☆ 主演は「壬生義士伝」の中井貴一さん。敵役には阿部寛さん。ソース顔の阿部さんのこういう役は珍しい。最初はどうかと思ったが、良かった。(そもそも誰も幕末の顔ではない。)

☆ 何のための仇討か。金吾は主君が好きだからと答える。美しい答えだがテロリストとしては一番扱いにくいタイプだろうと思った。

☆ 時代の激変期、何が正しくて何が間違っているのか誰にもわからない。後の人は何とでも言うが、当時の人々にとっては余計なお世話かも知れない。あれこれ言わず、様式美を楽しむのがよかろう。
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松本清張「地方紙を買う女」

2018-04-23 18:54:45 | Weblog
☆ 宮部みゆき責任編集「松本清張 傑作短篇コレクション」(文春文庫)から「地方紙を買う女」を読んだ。

☆ 何度もドラマ化されている作品だ。新聞の連載作家が真相を解明していくところは少々強引だが、読み進むほどに引き込まれてしまう。

☆ なぜ女は地方紙を買ったのか。読者はまずそこに興味を持つ。作者の思うつぼにはまる。それが入り口。

☆ 次に読者は連載作家の目を通して事件の真相解明に参加させられる。毎週「土曜ワイド劇場」や「火曜日の女」を見て、ミステリーには慣れているのに、トリックにはハラハラする。「ミスディレクション」。

☆ 最後は、夏目漱石「こころ」の先生の遺書、ドストエフスキー「悪霊」のスタヴローギンの「告白」のようだ。
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浅田次郎「うらぼんえ」

2018-04-23 14:44:21 | Weblog
☆ 浅田次郎さんの短編集「鉄道員」(集英社文庫)から「うらぼんえ」を読んだ。

☆ 胸にジーンとくる。

☆ 主人公のちえ子は幼い時両親から捨てられた。両親が離婚しそれぞれが新たな家庭を持ったのだ。そこにちえ子の居場所はなかった。ちえ子は父方の祖父母に預けられそこで成長する。薬剤師となった彼女は医師と結婚するが、その男は外に女をつくり子どもを孕ませた。

☆ 実の祖父母も亡くし身寄りが亡くなったちえ子だが、夫の祖父は彼女をかわいがってくれた。その祖父も亡くなって初盆を迎える。田舎の初盆は盛大で親類縁者が大勢集まる。気の弱い夫に代わって離婚を迫る夫の家族。四面楚歌。その時、思わぬ援軍が現れる。

☆ うらぼんえ、この世のものとあの世のものが出会う日。人は誰もつながりの中にいる。幻想的な風景の中、ちえ子は新たな出発を決意する。最後のシーンは美しく、そして胸が締め付けられる。
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