じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

北村薫「空飛ぶ馬」

2019-12-05 21:53:37 | Weblog
☆ 北村薫さんの「空飛ぶ馬」(創元推理文庫)から表題作を読んだ。

☆ 女子学生のにぎやかな会話の風景に始まる。それそれの好きな童話が話題となり、そこに馬の物語が登場する。

☆ 話は変わって、気のいい酒屋の若大将が幼稚園に木馬をプレゼントするという。その木馬がある夜、姿を消したというからさぁ大変。

☆ 主人公の女性は知り合いの落語家、円紫さんに謎を解いてもらう。

☆ 昭和を感じる作品だった。今の時代の子に「パーマン」や「ポパイのオリーブ」はわからないかな。静かなほんのり温かいクリスマスの風景が想像できた。 
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PISA調査から

2019-12-05 13:43:22 | Weblog
☆ OECD(経済協力開発機構)の「生徒の学習到達度調査(PISA)」の結果が公表された。

☆ 新聞各紙は、読解力が15位に下がったと大騒ぎ。これは「解答がパソコンで答える形になったから、パソコンに不慣れな日本の生徒に不利」だとか、専門家を巻き込んでの論争。

☆ 新聞記事はまず疑ってみること。ということで、国立教育政策研究所のホームページから調査結果を見た。

☆ そもそもPISAで何を測ろうとしているのか、本当はそこから検討しなければいけない。そうでないなら国際比較をする意味がない。また順位が上位にあることにどれほどの意味があるのだろうか。教育に関する国際援助の資料として、下位の国を調べるのは意味があるかも知れないが、上位の国についてはあまり意味がないのではないか。

☆ 日本が15位に下がったと大騒ぎしている「読解力全体」(「情報を探し出す」「理解する」「評価し、熟考する」からなる)、第4位までは「北京、上海と言った中国の都市」「シンガポール」「マカオ」「香港」と続いている。こうした国や諸地域と、1億以上の人口を抱える国を比較することの意味は何だろうか。

☆ 以下、第5位エストニア、第6位カナダ、第7位フィンランドと続く。かつて上位に位置し、「フィンランドの教育」が出版界でもてはやされたが、最近は下降気味だ。以下、アイルランド、韓国、ポーランド、スウェーデン、ニュージーランド、アメリカ、イギリスそして日本と続く。

☆ 日本の得点が504点、9位の韓国が514点だから、9位から15位までは10点以内にある。上位群としてまとめるならともかく、順位をことさら強調する意味はない。これは、日本国内で行われる「学力テスト」も同じ。都道府県ごとに競っても、ネタとしては面白いかも知れないが、あまり意味はない。

☆ この結果からわかることは、日本の生徒の読解力は「そこそこ優秀」ということだ。

☆ 気にかかるのは、日本国内における、上位層の減少、下位層の増加である。経年変化を見ると世界的にこの傾向が見られる。日本の場合、少々いびつで、2012年調査で上位層が大きく増えたのに、その反動からか2015年調査、2018年調査と減少している。

☆ 今回の調査で順位が下がったことよりも、2012年調査、どうしてこんなに好成績だったのか、そちらの方が不思議だ。専門家に言わせれば2015年調査からコンピューター入力になったことが原因だということだろうか。

☆ そうであるなら、この調査は読解力を調べるものではなく、コンピューター操作の熟達度を調べるものになってしまう。

☆ アメリカ合衆国では、スプーニク・ショックや1980年代の「危機に立つ教育」論争で、「情報化」に力が注がれた。日本の教育の情報化はアメリカより30年は遅れている。かといってアメリカの読解力が際立って優れているわけでもない。背景には貧富の格差、教育の格差がうかがえる。

☆ 調査に先だって政府は、公立の小中生1人に1台のパソコン(タブレット)を整備すると公表した。あまりにもタイミングが良すぎる。調査結果を踏まえて政策として整備するというならわからなくもないが、まず政策ありきで調査結果は後づけって感じがする。まさか統計処理に忖度はないだろうが。

☆ 調査で言うところの「読解力」は実用面を重視したもので、読解力の一面しか捉えていない。それを前提とした上で、「読解力」あるいは「情報リテラシー」といった方がよいかも知れないが、その力を伸ばすことは、デジタル時代に生きるには必要なのだろう。

☆ 政策サイドでは、ハード面、そして何よりもソフト面(指導者の養成、教材・授業開発など)の充実に力を注いでほしいものだ。
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東野圭吾「容疑者Xの献身」

2019-12-04 21:12:33 | Weblog
☆ 東野圭吾さんの「容疑者Xの献身」(文春文庫)を読んだ。傑作だった。この完成度には感動した。もはや推理小説、ミステリーなどと言ったジャンルを超えて楽しめた。

☆ 映画を観ているのでストーリーは知っている。ストーリーがわかっていても、あるいはわかっているゆえにさらに楽しめたのかも知れない。

☆ 高校の数学教師、石神は天才的な数学の才能に恵まれている。しかし、研究者の道は歩まず(映画では家族の介護のため)、教職に就いている。教育への情熱は感じられず、ひたすら数学に愛を注ぐものの、生きることの意味を見失っていた。

☆ そんな時、彼が住むアパートの隣室にある母子の引っ越してきた。人生に絶望した彼は、この母子に生きる光を見つける。それは途方もない片想いであり、決して満たされない願望であることを感じつつも、彼はこの家族を見守ることに生きがいを見つける。

☆ 美しい母親に恋心があったのか、その点は微妙だ。人とのコミュニケーションがうまくできず、ましてや異性との交流など皆無に等しい石神にとって、その湧き上がる情熱をどのように処理してよいのかわからなかったのであろう。

☆ そんなとき、殺人事件が起こる。母子を追って元夫がやってきたのだ。「俺からは一生逃れられない」。夫は脅して娘に暴力も振るう。たまりかねて母親が手を下したのだ。娘も手を貸したのだ。

☆ 母子が途方に暮れているとき、騒動を聞きつけた石神がやってくる。そして、母子を救うために、彼は緻密な計画を練る。

☆ そこでガリレオ、湯川准教授が登場する。石神と湯川はかつての同窓生でともに才能を認め合う仲だった。


☆ まだ読んでおられない方、ここからは、ぜひご一読あれ。

☆ 二重にも三重ものトリック、それに人間ドラマ、心の機微が加味され、実に面白い作品に仕上がっている。
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法月綸太郎「死刑囚パズル」

2019-12-02 16:08:57 | Weblog
☆ 法月綸太郎さんの「法月綸太郎の冒険」(講談社文庫)から「死刑囚のパズル」を読んだ。

☆ 死刑囚の刑が執行される。その瞬間、彼は苦しみだし、こと切れた。死刑囚が何者かに殺されたのだ。この奇妙なケースに法月警視と息子の綸太郎が挑む。

☆ 第一部の死刑執行のシーンは実にリアルだ。臨場感が伝わってくる。

☆ 綸太郎の推理はエンタテインメントよりも論理優先。誰が犯行を為しえるのか、緻密な分析が行われる。この辺り犯人探しや犯行の動機を先走りたい読者にはやや退屈だ。

☆ 最後は意外な結末に。もう一度読み返してしまう。

☆ 綸太郎の陳述はプラトンの作品のようだ(私はそれ以外にギリシャ文学を知らない)。死刑制度についても考えさせられる。
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志水辰夫「行きずりの街」

2019-12-02 02:09:21 | Weblog
☆ 志水辰夫さんの「行きずりの街」(新潮社)を読んだ。発行が1990年。わずか30年前なのに、時代の流れを感じる。

☆ 教え子との恋愛、そして結婚が問題となり学園を追われた主人公。東京を去り、今は故郷で学習塾を経営している。

☆ 行方不明の教え子の少女を探すため、再び東京へ、かつて勤めていた学園へと向かう。

☆ 東京にも彼にも、そして彼に関係する人々にも12年の歳月が流れていた。

☆ 学園内の権力闘争。暗躍する闇の組織。彼は少女を探す中で、学園の秘密を知ってしまう。そして・・・。

☆ この主人公、どうも事件を手繰り寄せる。フィクションゆえの演出だが、関わらなくても良いことに関わって、命からがら逃げ延びる。何度も暴行を受けるが、なかなかタフな中年だ。
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