TPPについての第2弾です。今回は、もしTPPに参加した場合にどうなるかということをシミュレーションしてみたいと思います。他の多くの分野は、他の方に委ねるとして、私の関心のある農業についてのみ考えてみます。
当然の帰結として、関税が撤廃されるでしょうから低価格の農産物が輸入されるでしょう。国内の農産物は、ただでさえ高価といわれております。ですからこれら輸入農産物に太刀打ちできるはずも無く、農家の売上は減少し、赤字経営となり、廃業へと進展します。このことがどれ位の時間軸で進展するかは、農業保護政策のあり方によって大きく左右されるでしょうが、いくら手厚く保護しようが、農産物の内外価格差を埋めることはできないでしょう。
この間、農業は三極分化していくものと考えられます。即ち、大規模集約化と価格競争力をもった極少数の農家と超零細化です。大規模集約化は議論の余地は無いでしょう。価格競争力を持った農家とは、輸出や高価でも購入できる消費者向けに超高品質農産物を生産する農家を指します。超零細化とは、高齢者が細々と営農を続けるとか、退職後の趣味などで家庭菜園規模で作付けするとか、私みたいに採算を度外視して趣味的に農業を続けるということを指します。その他の形態の農業は急激に衰退するものと思われます。
そうした場合、一般の消費者はどのようなものを食することとなるのでしょうか? 多くは大規模集約化された農業で生産された農産物または輸入農産物の選択と言うことになるでしょう。農業生産性を向上(≒コストダウン)させるためには化学肥料と農薬の使用は避けられません。農薬についての私の思いは「農業ことはじめ(8)-農薬について」で書いております。さらに輸入農産物については、ポストハーベスト農薬を含む残留農薬・禁止農薬の使用問題やフードマイレージの増大などの問題もあります。
さて、大規模集約化した場合の想定は「農業ことはじめ(9)-兼業農家について」で既に書いている通りです。また、農業に関しての思いについては「工業と農業の違い」「工業と農業の違い-その2」をご参照いただければと存じます。
TPPに参加しようがしまいが私のライフスタイルに関して言えば、ほとんど影響しないでしょう。むしろ影響が大きいのは、多くの消費者の皆様ではないでしょうか。とかく影響が大きいと想定される産業分野のみに目が向きますが、廻りまわって国全体に影響があります。無関心でいると「こんなはずではなかった」と後悔することにもなりかねません。他人事と思わず、大いに議論に参加することが必要なのではないでしょうか。