楽しい!金沢ことば(その1)「変化する北陸の方言」(No.462)
7月19日(土)フレッシュ「新三々塾」夏期講座、金沢大
学加藤和夫教授の「変化する北陸の方言」と題した講座が
石川県四高記念文化交流館2Fで開催され参加した。
□三々塾とは
旧四高生が修養と勉学の場として、共同で自主的に生活し
た下宿。創設は明治33年。旧四高特有の制度で、発足当
時、北条時敬校長が顧問となり西田幾多郎教授が指導した。
■写真は石川県四高記念文化交流記念館
■写真は開講あいさつする林勇二郎塾長(元金沢大学学長)
◇「変化する北陸の方言」~JR北陸線沿線4世代調査から
~講義内容
方言には、地方ごとに生まれたことばもあるが、むしろそ
の多くは、かつての中央地域(京都を中心とした近畿地方)
の言葉が伝わる過程で、あるいは地方に伝わった後に、変
化させたり(音声変化したり)意味を変えたりしたもので
ある。
北陸へのことば伝送は①陸上(京都~滋賀~福井~金沢)
②海上(京都~敦賀~金沢~能登)③陸上ダイレクト(京
都~金沢)であったと考えられる。
江戸時代には強固な幕藩体制を背景に全国に花開した方言
は、明治時代になって一転、国家統一のためにことばの統
一の方向が示され、国定教科書による標準語教育(方言撲
滅・方言矯正)が学校教育・国語教育のスローガンになる。
■写真は講義風景
戦後の方言(方言意識)をめぐる変化は第Ⅰ期方言撲滅期
(1960年代以前)。第Ⅱ期方言再発見期(1970年代~1980
年代)・・地方の時代(地方の見直し)と方言の見直し、
方言衰退への危機感。第Ⅲ期方言と共通語の共生期・・方
言の豊かさとその価値・役割への気づき、娯楽としての方
言と変化している。
加藤教授はこれからの時代、どこに行っても同じ風景(東
京のコピー)、食べ物や言葉ではなく、地方特有のものが
あって初めて楽しさがある。
金沢は新幹線開業により、歴史や史跡、歴史的建築、食文
化に加えて、もてなしの心で方言をもっと活用・紹介すべ
きではないかと訴えている。私もこの考え方に賛同する。
■写真は加藤和夫教授
加藤教授は共同研究「JR北陸線沿線グロットグラム調査
(富山県~京都)」を2007~2008年に実施した。その結果
で「つらら」「あぐらかく」「ダラ」「イジッカシー」
「ゴボル」などの分布図やグロットグラムの説明頂いた。
■写真は全国アホ・バカ分布図(当日資料より)
■写真はだら・だらずの分布(当日資料より)
興味あったのは「ダラ」でこのことばは石川県、富山県だ
けの方言と思っている人は多く、語源は真宗王国の土地柄
もあって、「陀羅尼教(だらにきょう)」「陀羅尼仏(だ
らにぶつ)」「阿呆陀羅教(あほだらきょう)」に由来す
ると考える人がいるが、もとは京都あたりで生まれた「あ
ほ・ばか」を意味する「たらず(足らず)」が北陸に伝わ
るうちに「たらず」⇒「だらす」⇒「だら」と形を変えた
ものと考えられる。この「だら」は石川・富山、「だらず」
は鳥取・島根、「たらず」は新潟県の一部に分布する。
■写真はだらの北陸グロットグラム(当日資料より)
■写真は加藤教授監修の「新頑張りまっし 金沢ことば」