河村顕治研究室

健康寿命を延伸するリハビリテーション先端科学研究に取り組む研究室

今なぜ「学士課程教育」か

2009-09-08 | 大学
最近、シラバスをきちんと書いてユニバーサルパスポートというWeb上のサイトに掲載して公開することが本学において求められるようになった。
講義もシラバス通り15コマは厳密に実行が求められる。
成績評価も各評価を規定に従って一定の分布で精密に行うことが求められ始めた。
さらに学生による授業評価も行われるし、ついには教員同士で相互に授業の批評をしようというような話まで出てきた。

外部から見ると当たり前のことかもしれないが、長年ぬるま湯のような環境で、講義を行ってきた身としては戸惑うことばかりである。


つい最近知ったのだが、中央教育審議会大学分科会が「学士課程教育の構築に向けて」という文書を公表している。

以下引用
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はじめに ~今なぜ「学士課程教育」か~
○ 中央教育審議会大学分科会では、平成18(2006)年以降、学士課程教育に重点を置いた審議を行ってきた。その問題意識の骨子は次のようなことであり、我が国社会の将来の発展のため、学士課程教育の構築が喫緊の課題であるという認識に立っている。
ア グローバルな知識基盤社会、学習社会を迎える中、我が国の学士課程教育は、未来の社会を支え、よりよいものとする「21世紀型市民」を幅広く育成するという公共的な使命を果たし、社会からの信頼に応えていく必要があること。
イ 高等教育そのもののグローバル化が進む中、明確な「学習成果」を重視する国際的な流れを踏まえつつ、我が国の「学士」の水準の維持・向上、そのための教育の中身の充実を図っていく必要があること。
ウ 我が国に顕著な少子化、人口減少の趨勢の中、学士課程の「入口」では、いわゆる「大学全入」時代を迎え、教育の質を保証するシステムの再構築が迫られる一方、「出口」では、経済社会からイノベーションや人材の生産性向上に寄与することが強く要請されていること。
エ 政策的には、大学間の競争の促進によって教育活動の活性化が図られてきたが、教育の質の維持・向上を図る観点からは、大学間の「協同」が併せて必要となってきていること。
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このはじめにに続く、様々な提言の中に、。シラバス、セメスター制、キャップ制、GPAなどの諸手法や高大連携、ファカルティ・ディベロップメント(FD)やスタッフ・ディベロップメント(SD)、業績評価、授業改善などのキーワードがもれなく登場する。

こうしてみると、私の周りにおいて展開されている動きは、この中教審の提言を忠実に実行している結果だと言うことが分かる。


難しい文言が並んでいるのでよく理解できないが、私なりに解釈するとこういうことではないだろうか。

今や少子化で大学進学は特殊なエリートだけがするのではなく、ごくありふれたものとなっている。
一方大学生の卒業後の受け皿となる企業は、昨今の不況のために即戦力となる学生を求めている。
であれば、大学教育は卒業したらすぐに使い物になる知識をきちんとたたき込む必要がある。

かくして講義の内容は特定の研究に偏ったものではなく普遍的な一般知識を教えることが求められるし、休講で講義の漏れがあってはならないと言うことになる。
研究ばかりして講義に手を抜く教員はけしからんということになる。



しかし、その一方でしっかり研究して外部資金を取ってくることが求められている。
最近は科研費でも獲得金額の30%は間接経費として別に大学に交付されるから、例えば1億円科研費を獲得したら3000万円は大学の収入が増えるのである。

しかし、日本の大学においては巨額の研究費を獲得できる研究者でも、一律に講義を持って授業も規定に従ってきっちり行うことが求められる。
特に私学においては講義が免除されるなどと言うことは考えられない。

これは公平なようであってあまりよい制度とは言えないのではないだろうか。

アメリカでは優秀な研究者は巨額のグラントを取ってきて自分の給料も、研究室の賃料もその中から支払っている。
講義はほんの申しわけ程度に行うだけである。
一般的には講義を中心に担当する教員は研究は行っていない。
完全な分業体制ができているのである。

アメリカとはまったく環境が異なるのに、アメリカ的制度だけ持ってきても始まらないと思うのは私だけだろうか。
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第77回知能化医療システム研究会

2009-09-05 | 研究・講演
ナカシマメディカルで2ヶ月毎に行われている研究会に参加した。
東大からはいつもの通り、光石教授以下多数の参加があった。

今回の研究会の中で、今年度の補正予算で行われる補助事業に応募していたところ中四国でナカシマメディカルを中心に応募した課題が採択されて、その正式な通知書が届いたことが報告された。
岡大整形外科の尾崎教授をリーダーとした悪性腫瘍の人工関節に関するテーマで、吉備国際大学からも私が参加している。
数億円の補助事業で、現在ナカシマメディカルが持っている研究所を増築して研究機器を整備するのに使われる予定だ。

補正予算なので、単年度補助事業で、研究所ができたあとのランニングコストは別の研究費を当てるか、ナカシマメディカルが負担しなければならない。
参加者からは、
「民主党が政権を取ったんだから、この事業は凍結されるんじゃないか。」
とか、
「これじゃ毎年赤字で運営が大変じゃないか。」
とか、巨額の補助金をもらうというのに、あまり嬉しいという反応はなかった。

しかし、ナカシマメディカルの人工関節事業は順調なようなので、なんとかなるだろう。

私も一応末席を汚すメンバーなので、何か貢献できたらと思う。

しかし、何はともあれ、ナカシマメディカルは岡山県下では最も産学連携がうまく行っている企業である。
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東京出張

2009-09-04 | 大学
文科省からの補助金を受けて運営している保健福祉研究所の中間報告を月末に控えて、研究所長のK先生とともに急遽、東京へ行ってきた。
本学の理事を務めるW先生に研究上の助言を求めるためである。

東京には人も情報も何でも集中している。
ふだんはインターネットで何でもこなすことができるが、大事なことはやはり東京に出てくる必要がある。

K先生は東京に出てくるのは15年ぶりだとおっしゃる。
いつも高梁で研究に没頭して仙人のような生活をされている人なのでうなずけるが、それでも15年間一度も東京に来たことがないなんて、やはり普通の人ではない。
驚いてしまった。
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顔に貼るマスク

2009-09-02 | 研究・講演
世の中、発明の種に困ることはない。

先日、いくら高性能なマスクでも顔との隙間からウイルスが侵入するから意味がないと書いたところだが、さっそくそれを補う製品が発表された。


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 アース製薬は2日、顔に直接張って使うマスク「ウィルガード バイラマスク」を15日から発売すると発表した。

 肌に密着するため、鼻やほおの周囲などにすき間ができやすい従来のマスクと比べてウイルスなどの侵入や飛散を防ぐ効果が高いという。

 マスクは米メーカーが開発し、昨年3月から現地で発売している。裏面の粘着シールで鼻から下半分に張り付けて使う。耳にかけるバンドがないため、耳が痛くならず、顔のサイズに関係なく使用できる。

 値段は1枚入り900円(税抜き)、5枚入り4250円(同)となる予定で200万~300万枚の販売を見込んでいる。

TOMIURI ONLINEより
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しかし、1枚900円というのはちょっとありえない値段ではないだろうか。

毎日必要なマスクがこれではどうだろう。

高いマスクは、使い捨てにしづらく、何回も使用されることになりがちである。
そうすると、ウイルスの付着した表面を手で何回も触ることになるから、結局意味がないのである。
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