友人のエスパニョールが面白い
事を言っていた。
本国に帰ってから玉撞きをした
ら、多分本国の連中が何を言っ
てるかチンプンカンプンだろう、
と。(ママ)
なんで?と訊くと、日本で玉撞き
を覚えて、全て日本語で理解して
いるからだ、との事だ。
マスワリ、取り切り、バタバタ、
切り返し、押し、引き、ヒネリ、
切り押し、切り引き、キュー切れ。
日本語の一般撞球用語だけでなく、
最近では「温泉」という都内某
品川区限定用語まで彼は使う。
これは、ミスったら、相手が確実
に取り切りや連続マスワリをやる
から「温泉にでも浸かって休んで
ろ」という俗語で、都内某エリア
限定で使われていた。
仲間内の相撞きで、ミスった本人
に周囲が悪意なく「おんせぇ〜ん」
と言う。元々、キャロムのピン倒
し撞きの時に言われて来た東京の
業界俗語だ。
で、ターンした相手がすぐミスを
したら、「今片足浸かっただけだ」
とか温泉待ちの人間は言ったりす
る。
無論、気の置けない仲間内だけで
のやりとりだ。
日本語で玉撞き言葉を覚えたら、
外国人は母国に帰ったら、そりゃ
なかなか即言葉が分かりはしない
だろう。
そもそも、スペイン語ではビリヤ
ードという単語ではないし(笑
スペイン語ではbillar(ビリヤァ)
だ。ドもズも存在しない。
英語の場合、競技を指す時は単数
形だが、ビリヤード場の場合は
ビリヤーズとなる。
日本では、東日本と西日本でビ
リヤード言葉がかなり違ってい
たりする。
フェルールの事は東日本では先角
と呼び、西日本ではコツと呼ぶ。
また、関西では「ビリヤード」は
ビリヤード場の事も指す。
「すまんが、そこら辺のビリヤ
ード、探してきてんか」(映画
『道頓堀川』)等。
今ではほぼ消滅した関西撞球言葉
に「ローテーション」というのが
ある。
これはポケット・ビリヤードの
事を指した。
アメリカン・プールの事、そして
それ用の台の事をローテーション
とか「ロ式」と関西では呼んだ。
私が始めた1986年当時にはまだ
その呼び名は残っていた。
その伝統があるからこそ、大阪府
の公式ポケットビリヤード団体は
ORC(大阪ローテーションクラブ)
なのだ。日本の歴史と独自文化を
守る良い名称だ。
日本では日本語による撞球用語
の文化がある。
それを捨象して、撞球用語を無理
やり私的導入で何でも英語で表現
するのは私は極めてナンセンスだ
と思っている。
海岸通りは海岸通りなのだ。
気取ってコーストアベニューとか、
シーフロントストリートとか取っ
て付けたように呼ぶのは、何だか
とってもくそダサい。発想と思惟
の発現がくそダサい。
山手通りは山手通りだ。
そして私は、和製語の「オート
バイ」が好きである。