「あ、川村さん、こんにちは。今日はどうします?」「えぇ、だいぶ伸びたので、まぁ夏だし、サッパリとお願いします。」「はい。じゃあ、シャンプー台へどうぞ。」「はい。(歩きながら)・・・もう、いっそスキンとか、ね(笑)。」「スキン?あはは(笑)。」
それ以上何も言わず、あとは世間話をしながら、おまかせでお願いしていたんですが、えー、結果、いつものように普通にカットされました。肉持ってる笑ってる妙な写真の時とあまり変わりありません。やっぱり冗談だと思われたみたいです(笑)。なんか皆さんから、えっらい反応を頂きまして(笑)。お騒がせしてすみませんでしたー。
でも、僕、ちゃんと言ったんですよ、一応、スキン、っては(笑)。
えー、お騒がせしたお詫びに()、まじスキンな人のお話を、今日は写真満載の、特大版にてお伝えしようと思います。携帯からの方、すみませんー。
Mr.ブルース氏(仮名)。米西海岸はサンタモニカの「サードストリートプロムナード」というショッピングストリートにあまたおられる大道芸人さんの一人です。
彼はどうやら、バスケットボールを廻す芸を見せてくれるらしい。写真じゃ判りづらい(判らない)のですが、両手のボール、これ、ちゃんとクルクル廻ってるんですよ。
Mr.ブルースが芸を始めたときには、周りに20人くらいがまばらに見てる感じでした。僕もその一人。しかも僕、けっこう遠くからみてたんですよ。なのに、「ヘイ、ユー!ジャパニーズフレンド!カモンップリーズッ!」って、完璧に指差されて呼ばれて「カメラ持ってる?」って訊かれたので、いつものピロリン携帯をだすと、彼の目の前に立たされ、「ヘイ、ルッ~ク(見て)!」。なんだかカメラマンとして雇われたようでした(笑)。
サンタモニカの大道芸人さん達は皆、ハワイのワイキキの芸人さん達に比べて、なんといいますか、より熱っぽい感じなんですよ。プロっぽいというか、ひとによっては必死感まで漂うほどに。「イエィ、何がなんでもギャラリーを楽しませてやるゼィ。お金も稼いでやるゼィ。」みたいな。Mr.ブルースもごらんのようなナイスポーズを次々に決めてくれます(笑)。僕は専属カメラマン、かぶりつきで撮影です(笑)。アタマに乗せた地球儀のフレームの中でバスケットボールがクルクルクル~。いや、お見事~。
すると、何を思ったかブルース氏。「ちょっとそれかして。」僕から携帯を取り上げると、そばで見ていた白人男性を「ヘイ、ミスター!マイフレンド!」と、また勝手に友達にして(笑)、これで撮ってやってくれ、と、彼に渡しました。戸惑いながらも、シャッターを切る白人男性。ピロリ~ン。ギャラリーもだんだん増えてきているのが判りますね。えー、いったい何が始まるんでしょうかー、の図(笑)。
ブルース氏は大汗をかきながら、ギャラリーを笑わせることに一生懸命。何言ってんだろー?僕には半分もわからなかったんですねー(笑)。でも、どうやら僕は、カメラマンから、アシスタントに昇格(?)したらしいです。んー、何やんのー、大丈夫かいなー。ところでなんで俺、今サンタモニカで外人さん達の真ん中に立ってるのさ?変なのー、なんて考えていましたけど(笑)。
でも、次第に事情がつかめてきました。まぁ、芸人同士ですから。なんつって。えー、どうやら、僕の上でボールを廻したいらしい。ふむ。でっきるっかなでっきるかな。
はい、この写真。めっちゃ大汗かいた黒人の大男(推定身長190cm)、Mr.ブルースが、僕の目の前に必死の形相で近寄ってきて(しかもこのとき、変な星型のサングラスかけてた(笑))、目の前30cmで、こう、僕にだけ聞こえるように、こっそりと小声で言ったんです。日本語で、ですよ、日本語で。
「アナタノ、ナヤミハ、ナンデスカ。」
はぁ、この状況で、何故に今、いきなりそういう難しい質問をするのかっ?とっさのことに、答えに困る僕。
「アナタノ、ナヤミハ、ナンデスカー。」
えー、えー、まじかいな。ちょっとちょっと、何を言えばいいんだ?なんて言えばいいんだ?なんだ、キリスト教の国だと、こんな場面でも、いきなりこんなこと訊かれるのか?
悩みを英語で説明なんて大変だぞ。「お蔭様でおおむね楽しく人生送ってます。ありがとうございます。まぁ、しかしですね、日本に帰れば僕にも仕事がありまして、やはりそこには色々と難しいこともあるんですよ、こう見えて。まぁそれは全て、日頃の僕の行いっていうか、まぁ努力鍛錬の足りなさ故の・・・」なんて日本語で言って通じるとも、絶対に思えない。
「アナタノー、ナヤミハー、ナンデスカー。」
語調が少し強くなってきた。Mr.ブルースの汗がどんどん大粒になって、スキンのアタマからプツプツと噴き出し、アゴへ垂れていく。ギャラリーもどんどん増えている今、ここで退屈な場面は彼にとって死活問題、許されないといった感じがひしひしと。しかもギャラリーから見たら、ブルース氏と僕が、小声でこれからの芸の打ち合わせでもしているように見えている、かもしれない。どうしよう、悩み、悩み・・・あぁ。
「アナタノー、ナヤミ、ナヤミハー、ナンデスカー!」
「え、えっとぉー、バスケットボールがぁー、ヘッタクソなことでーす。(一応英語で)」
何か言えばいいってもんじゃない(笑)。なんだ、それ、ってくらい、ひどい答えだ(笑)。自分への戒めのために、そのまま載せてみました。でも、でもね、この時は、ええと、彼はバスケットの芸をしてるんだし、なんか僕との差というか、かっこいいとこ見せたいのかもしれないから、ここは彼を立てて・・・などと(笑)、我ながらこの間にワケわかんない理屈をこねて、まぁ、僕なりにがんばってこう言ったんですよ。なのに、
「ノー。」
なんで「ノー」、なのさー。発音悪かった?もう一回言う。「ノー!」、もう一回、「ノーノーノー!」焦る2人。晴天のサンタモニカ、100人を越すギャラリーの真ん中で、焦る初対面の外国人が2人(笑)。
「ノーノーノー、アナタノ、ナヤミ、ナヤミ、ナヤミ・・・、ナンデスカーナンデスカー。」
・・・んあ。
もーっ!一体、なんなんだいっ!?
キミが何を訊きたいのか解らないのが、僕の悩みだよ~っ。
・・・はい、ここで。
Mr.ブルース、さらに声のトーンを落とし、僕の耳元でこう言いました。こんどは英語です。
「・・・What is your name?」
は?
僕の・・・名前?
「My name is Ken.」
超即答。
「Ken?」
「Yes,My name is Ken!」
すると突然、ギャラリーに向き直ってMr.ブルース!大声で皆にこうのたまった!
「ハーイ、皆さぁ~んっ!
彼は日本からやって来た、僕の友達だ~っ!
彼の名前は、ケンだよ~っ!!イェ~ッ!」
(深夜のテレビショッピングのノリね(笑)。)
あのぅ、えっとー、・・・ひょっとして、ミスター。
あなた、僕の悩み(ナヤミ)、ではなく、名前(ナマエ)を、訊いていたの?
さっきからずっと・・・。
まぁ、なんといいますか。よくあることなんですけどね、言葉の憶え違いね。でも、かなり本気で焦ったんですよ。そしてかなり笑えましたね(笑)。
そして、ショーは続きました。僕のあたまの上で、手の先で、果たしてボールは廻るんでしょうか~っ?
ほっ。
一個落としたわけじゃないんですよー。残念ながら写真には残ってないんですけど、一瞬だけど、地球儀の上のボールの上にさらに、もう一個、ちゃんと乗ってたの。なので、大成功だったのであります。たぶんね(笑)。
ショーが終わり、ギャラリーが散っていきました。ボールをしまい、バケツに溜まったチップをバッグに丸め込むと、「サンキュー、ケン!」と、Mr.ブルース、人懐っこい笑顔と白い歯で、ニッコリ。しっかと握手をして、お別れしました。
・・・が。
Mr.ブルース、NayamiとNamae、家に帰って、辞書調べなおしてくれたかなー(笑)。教えそこなって、帰ってきちゃった。あ、わざとじゃないですよ(笑)。ほんとに、えらい違いですからねー。
ではー。