稽古なる人生

人生は稽古、そのひとり言的な空間

【考察】剣道形三本目の「入れ突きに萎やす」について

2018年07月04日 | 剣道・剣術
あくまでも自論ですので間違っているかも知れませんし、
今後見解が変わる可能性もありますのでお許しください。

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秋田で四段を戴いたすぐに千葉に引っ越し、
日本武道館の武道学園で稽古を再開した。
30数年以上も前のことである。

剣道形は昇段審査の時にやった程度でさっぱり覚えていなかった。
夏休みの道場開放日に、生徒同士で剣道形を集中的に自主稽古したものだ。

「入れ突きに萎(な)やす」がわからない。
「萎やしてから突く意味」という意見もあったが、それでは文法的におかしい。
それなら「萎やして突き返す」だろうと思っていた。

悩んでいたら、平成28年に亡くなられた丸山鐵男範士が「こうするんだ」と教えてくださった。

「入れ突きに萎やす」とは、相手が突いてくるのを、
こちらも腕を伸ばして突きながら一歩下がって手元に引き寄せ萎やすことだ。


なるほどと思い、これを今までずっと実践してきている。



日本剣道形解説書(全日本剣道連盟)より

「仕太刀は、左足から一歩大きく体をひきながら、打太刀の刀身を
物打の鎬で軽く入れ突きに萎やすと同時に打太刀の胸部へ突き返す」
とある。

注には「萎やすときは刃先は右下を向き、突くときは真下を向く」とある。

留意点の打太刀のところでは「仕太刀の萎やし入れ突き」という表現になっていて、
下の打太刀のところでは「打太刀の刀身を物打の鎬で入れ突きに萎やし」である。


(頁は書いていないが日本剣道形解説書の24頁に該当する)

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「入れ突き」についての考察

留意点では打太刀の項と仕太刀の項の表現が正反対に異なっている。
「萎やし入れ突き」と「入れ突きに萎やす」は意味が全く違うと思うのだがどうだろうか?

この留意点では「入れ突き」という表現を、
別の場面で使ってしまって混乱を生じている気がしてならない。

「入れ突き」という表現は定説が無く難解な表現である。
この難解な「入れ突き」という表現を、わざわざこの三本目に用いたのは、
剣道形が制定された昔にさかのぼり、奥深い理合があったからに違いないと思うのだ。

この解説書の表現は実に難解である。
「萎やすと同時に打太刀の胸部に突き返す」も物理的に無理がある。
「萎やしたあと、即座に打太刀の胸部に突き返す」とすべきであろう。

結果として「萎やし入れ突き」は間違った、あるいは間違いやすい表現だと思うのである。

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さて、理合としての考察
(師の位、弟子の位という話は理合では抜いて考えるのでご理解あれ)

この場合、打太刀と仕太刀の理合はどうなのか?

「打太刀は機を見て仕太刀の水月を突く」とある。

機とは何か?
仕太刀が突こうとするところが「機」である。
形(かたち)には現れないが、詳しく言うと、
仕太刀が本気で突こうとする気の起こりがこの「機」なのだ。

仕太刀は打太刀の突きを待ち受けて萎やすのでは無い。
明らかに待ち構えてる相手に突きに行くような間抜けな理合は無い。

遅れたら仕太刀に突かれるから「より先に突こう」とするのが打太刀なのだ。

もし捨て身の打太刀の突きを萎やすだけが目的なら仕太刀の刃先は左下で良い。
構えたまま、やや剣先を立てて刃先を左下にすれば、打太刀の剣先は我が身から簡単に外れる。
(一刀流の上段霞という技ならここから突き返すところ)

仕太刀が刃先を右下にして対応するということは、
お互いに気位が対等であり、お互いが突こうとしているからである。

仕太刀が突こうと色(突く気配)を出す。
それが機となり打太刀は我れ先にと突く。

攻めて突くのは刃先が右下が剣の理合。
守って突くのは刃先が左下が剣の理合。
(七本目の仕太刀の打太刀の突きを支える形がそれに近い)

気位は対等として突きに出るが、仕太刀が(わざと)やや遅れる。
その(わざと)遅れた突きが「入れ突き」の動作で、
手繰(たぐ)り寄せるように打太刀の突きを手元まで引き入れるのが「萎やし」。
そして体勢の崩れた打太刀に突き返すのが「打太刀の胸部に突き返す」である。

こうなると何をしても気位として仕太刀の勝ちである。
そして打太刀は気で押されて後ろに下がってしまうのである。

三本目は決して仕太刀が待っている理合で無いところに妙味がある。

三本目に限らず「打太刀の機を見て打つ(突く)」の「機」とは何か?
これがわかれば剣道形も(剣道も剣術も)面白くなると思うのである。

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以上ここまで。

加筆訂正があるかも知れません。悪しからず。
コメント (4)
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