【撮影成功! 月光の下、ヴィクトリアの滝に虹の架け橋】
世界各地の世界遺産を撮り続けている写真家、三田崇博(さんだ・たかひろ)さんの「世界遺産写真展2012 アフリカの遺産と人々」が25日、奈良県生駒市の北コミュニティセンターで始まった(29日まで)。2008年9月に世界遺産を巡る旅を始めて4年目。これまでに巡った国は63カ国に上る。今回の展示会での発表作品は3月下旬から2カ月半にわたるアフリカ南部7カ国訪問の写真を中心に50点。三田さんの個展を拝見するのは今春の「ユーラシア大陸2008~2010」以来2回目だったが、今回も雄大な世界自然遺産とともに、地元の風俗や街並み、子どもたちの笑顔など息遣いが伝わる作品の数々には、ほのぼのとした温かさがこもっていた。
三田さん(写真)は1975年奈良県生まれの37歳。滋賀大学教育学部卒。2006年、イタリアで撮影した写真が読売新聞の「旅のノンフィクション大賞フォト部門」で優秀賞を受賞。08年に初の個展を開き、これを機に勤めていた会社を退職し、世界遺産撮影の世界一周旅行をスタートさせた。これまでに7回撮影の旅に出て、その都度、帰国後各地で展示会を開催。昨年の東日本大震災では2回にわたり宮城県などで津波に漬かった写真の修復作業などのボランティア活動に参加し、その傍ら被災地の惨状を写真に収めてきた。
今回のアフリカ撮影旅行では、南アフリカで背後から2人組の強盗に襲われ携帯と小銭入れを奪われるなど困難を伴った。だが撮影はほぼ順調だったという。その中でも一番の収穫は4~5月の満月の時にしか見られないというヴィクトリアの滝(ザンビア―ジンバブエ)に架かる虹の架け橋をカメラに収めることができたこと。三田さんが「月光のもとで」というタイトルをつけたその写真は、自然の造形美が豪快な滝の音をもかき消して、静謐(せいひつ)で神秘的な雰囲気をたたえていた。
展示作の中に南アフリカの〝負の世界遺産〟ロベン島の強制収容所の写真があった。反アパルトヘイトの闘志で元大統領のネルソン・マンデラも、この監獄に長くつながれていたという。ナミビアの裸族ヒンバ族の母子と、洋服を着飾ったヘレロ族の女性2人の写真は、同じ近隣の国民の好対照な姿を切り撮って、文明の進歩と幸福度の関わりについて問いを投げかけているかのようだった。果物店の店番をする2人の少年や、あどけない笑顔のストリートチルドレンの女の子、小さな妹を抱いた少年の優しげな表情なども印象に残った。そして、宝石箱のような南アフリカ・ケープタウンの夜景の美しいこと。バオバブの並木道やライオン、シマウマ、ケープペンギンなどの動植物の写真も、まだ見ぬアフリカの魅力を鮮明に伝えてくれた。
アフリカ撮影旅行の展示会はこの後、奈良市の写真美術館や兵庫県西脇市、松山市、長崎県佐世保市など各地で順次開催の予定。それが終わると、10月ごろから今度は南米を訪ねる予定という。そして、その後は北米とオセアニア。それで世界一周の旅はとりあえず完結するそうだ。その都度開かれる三田さんの写真展を通して、世界の〝空気〟を吸わせていただきたい――。次回南米編がまた待ち遠しくなってきた。