【葉は腫れ物などの民間薬に、茎は佃煮などの食用に】
キク科ツワブキ属。常緑の葉に艶がありフキに似ていることから、その名がついた。「艶葉蕗(つやばふき)」から転訛したものともいわれる。花期は10~12月。福島県以西の太平洋側や石川県以西の日本海側の海岸に自生し、沖縄、朝鮮半島、中国東部にも分布する。半日陰でもよく育ち花の少ない時期に咲くため、庭植え用としても人気が高い。園芸品種には葉に黄色の斑点が入ったものや葉の縁が波状になったものなどもある。野菜のフキはキク科フキ属で別の仲間。花期も3~5月と異なる。
葉には強い抗菌作用があり、古くから身近な民間薬として利用されてきた。もんだり火であぶって軟らかくし、腫れ物や湿疹、やけど、しもやけなどの患部に貼る。茎はフキと同じように食用になる。ゆでてアク抜きしたものを煮物や炒め物、胡麻あえ、酢味噌あえなどに。花やつぼみも天ぷらや酢の物になる。
四国最西端の佐多岬半島にある愛媛県伊方町はツワブキを「町の花」に制定、地元の味噌製造業者が半島自生のツワブキで味噌漬けや粕漬けを作っている。広島県沖の瀬戸内海に浮かぶ生野島(大崎上島町)でも地元商工会が群生するツワブキを使って、2年前から佃煮の製造・販売を始めた。
静岡県の伊豆半島ではツワブキを「イソブキ」と呼ぶ。東伊豆町はそのイソブキが町の花になっている。下田市の寝姿山や沼津市戸田の御浜海岸も群生地として有名。日本三景天橋立に近い京都府宮津市の山王宮日吉神社では毎年、名物の「赤ちゃん初土俵入」(体育の日)に合わせるかのようにツワブキが一斉に咲き始める。愛媛県今治市の大角鼻では黄色のツワブキが白いノジギクとともに斜面を埋め尽くす。
島根県津和野町の町名は「ツワブキの野」が転訛したという。ツワブキは単に「ツワ」とも呼ばれる。出雲風土記(733年完成)には「都波(ツハ)」として登場する。俳句の季語としては初冬の花だが、そこでも「石蕗(つわ)」や「つは」などとして詠まれたものが多い。「淋しさの眼の行く方やつはの花」(大島寥太)、「静かなる月日の庭や石蕗の花」(高浜虚子)。