【ネパールの国花、品種改良で世界に1000~1500種】
ツツジに似た花がブーケのように球状に集まったシャクナゲ。ツツジ科ツツジ属で、漢字では「石楠花」または「石南花」。ただ、これは中国で公園や墓地によく植えられるオオカナメモチという別の植物の漢名を誤って借用したことによるという。シャクナゲの語源は「避難儀(さくなんぎ)」で、これが転訛したものという説もあるそうだ。
原産地は日本から中国、ヒマラヤにまたがるアジア地域。日本にはツクシ(筑紫)シャクナゲ、アズマ(東)シャクナゲをはじめホソバ(細葉)シャクナゲ、ハクサン(白山)シャクナゲ、ヤクシマ(屋久島)シャクナゲ、キバナ(黄花)シャクナゲなどがある。単にシャクナゲという場合、ツクシかアズマを指すことが多い。ツクシの変種にホン(本)シャクナゲやキョウマル(京丸)シャクナゲがある。
ヒマラヤ地方はシャクナゲの宝庫といわれるほど種類が多い。ネパール語で「ラリーグラス」と呼ばれる真っ赤なシャクナゲの花はネパールの国花にもなっている。低木が多い日本の自生種と違って10mを超える高木に育つ。「西洋シャクナゲ」は中国・雲南省~ヒマラヤ地方を中心にアジアに自生していた野生種がヨーロッパに伝わり、英国やオランダなどで品種改良が重ねられて生み出された。その品種は1000種とも1500種ともいわれる。
滋賀県と福島県の県花。滋賀では日野町・鎌掛谷のホンシャクナゲの群落、福島では吾妻山のヤエハクサンシャクナゲの群落が国の天然記念物に指定されている。このほか長崎県諫早市・多良岳や福岡県豊前市~大分県中津市の犬ケ岳のツクシシャクナゲ、群馬県草津町・草津白根のアズマシャクナゲとハクサンシャクナゲ、長野県南牧村・八ケ岳のキバナシャクナゲなどの群落も天然記念物になっている。
最盛期を迎え各地でシャクナゲ祭りが開かれている。主な所では広島市の「花みどり公園」(5月6日まで)、福岡県添田町・英彦山公園(同)、静岡県伊豆市・天城グリーンガーデン(5月12日まで)など。国内の自生種を中心に50種7000本が咲き誇る兵庫県香美町の「全国石楠花公園」は5月3日、ホンシャクナゲの自生地・岡山県新見市の三室峡は4日に開く。
関西では奈良の室生寺や長谷寺、岡寺をはじめ、月輪寺(京都市)、金剛三昧院(和歌山県高野町)、勝尾寺(大阪府箕面市)、三室戸寺(京都府宇治市)などもシャクナゲの名所として知られる。滋賀県東近江市の村田製作所八日市事業所では200種900株以上を植栽した「しゃくなげ園」を一般公開中(5月12日まで)。「石楠花の紅ほのかなる微雨の中」(飯田蛇笏)。