【赤天狗・一言主大神・お多福が練り歩き参拝者の健康長寿などを祈願】
全国の一言主大神(ひとことぬしのおおかみ)を祭神とする神社の総本社、葛城一言主神社(奈良県御所市森脇)で15日、秋季大祭が開かれた。祭神の一言主大神は一言の願いなら聞き届けてくれるといわれ〝いちごんさん〟と親しまれている。この日は願い事を書いた祈祷串を本殿前の神火壇に自らくべて祈願することができ、「御神火祭」や「お火焚祭」とも呼ばれている。始まったのは室町時代の1482年といわれ、本殿に登壇できるのは年に1回この日だけとあって多くの参詣者が詰め掛けた。
同神社は葛城山の東麓に鎮座し、一言主大神とともに幼武尊(わかたけるのみこと、雄略天皇)を祭神として祀る。古事記によると、雄略天皇が葛城山で狩りをしていた時、一言主大神が天皇と同じ姿で現れた。天皇が「どこの何者か」と問うと、「善事(よごと)も悪事(まがごと)も一言で言い放つ葛城の一言主大神なり」と答えた。すると天皇はひれ伏して、その後一緒に狩りを楽しんだ――。一言主大神は当時この一帯を本拠地とした大豪族葛城氏の奉斎する神。この説話は葛城氏の権勢がいかに強大だったかを端的に示す。
大祭は本殿の開扉に続いて献餞、祝詞奏上、そしてお火焚きへ。神火壇に火が入ると、参詣者は祈祷串を手に列を成し、拝殿を通り階段を上って本殿前の神火壇まで進んだ。神職はこの日参拝できない人の祈祷串を大量に抱えて最後列に控えていた。ちらっと目にした祈祷串にはこんな願い事が書かれていた。「病気平癒 糖尿病が治りますように」。宮司さんによると「良縁」というのも結構あったそうだ。神火壇から立ち上る煙は本殿・拝殿を囲む高い樹木まで達していた。
お火焚きの後は「神降神事」。拝殿から宮司とともに赤天狗(猿田彦命)、祭神の一言主大神、お多福のお面を付けた3人が登場。宮司が金銀など色とりどりの切り紙をまきながら先導し、参拝者の間を練り歩いた。黄色い装束の赤天狗は腰に太刀を差し、右手には金剛杖。緑色の装束の一言主大神は参拝者の頭上で御幣を打ち振り、青装束のお多福は両手で鈴を鳴らして参拝者の願い事がかなうよう祈願して回った。この後、拝殿前では参拝者全員にお神酒と紅白饅頭の授与があった。