【ケシ科の野草、ムラサキケマンの白花種】
ケシ科キケマン属の越年草で、全国各地の草地や畦道、野山などのやや湿った場所でごく普通に目にすることができる。台湾や中国などにも分布する。草丈は20~50cm。この植物は花全体が紫色のムラサキケマン(別名ヤブケマン)の白花種で、4~6月頃、花茎上部の総状花序に長さ1~2cmの先端の花弁が紅紫色の筒状の小花を密に付ける。筒の奥の袋状の距(きょ)には蜜腺がある。
ムラサキケマンの学名は「Corydalis incisa(コリダリス・インキサ)」。属名の語源はギリシャ語の「雲雀(ヒバリ)」から。種小名は「鋭く裂けた」を意味し、葉に深く切れ込みが入っている様子を表す。シロヤブケマンにはこの種小名の後ろに「f. pallescens(パレスセンス)」がくっ付く。「f.」はラテン語の「forma(品種)」の略。パレスセンスは「淡白色の」を意味する。ムラサキケマンの白花種にはこのシロヤブケマンのほかにもう一種ある。「ユキ(雪)ヤブケマン」と呼ばれるもので、こちらは花弁全体が真っ白になる。
和名後ろの「ケマン」は金属や革に天女や花鳥などを透かし彫りして仏殿の内部を飾る荘厳具の華鬘のこと。同じケシ科植物のケマンソウ(別名タイツリソウ=鯛釣り草)の花の形がハート形で華鬘に似ていることから名付けられた。ムラサキケマンはアゲハチョウの仲間、ウスバシロチョウの幼虫の食草になっている。ただ全草にプロトピンという有毒成分を含んでおり、誤って口にすると嘔吐や心筋麻痺により痙攣などを起こす恐れがある、とのことなのでご用心。