【開花前後の植物ホルモン剤処理で種なしに】
ブドウは古くから品種改良が繰り返され、その品種数は今や世界で1万種を超えるという。大別すると欧州種、米国種、欧米雑種に分類される。欧州種のブドウは一般に皮が薄く粒が大きい。ただ乾燥を好み病気に弱いため、日本では栽培しにくいといわれる。一方、米国種は湿潤に強く病気になりにくいが、ブドウの皮が厚く粒も小さめ。欧米雑種には両者の長所を引き継いだものが多く、国内で広く栽培されているブドウにも欧米雑種の品種が目立つ。国内で作出された巨峰、ピオーネ、シャインマスカットなどはいずれも欧米雑種。アメリカ生まれのこのデラウェアも欧米雑種の一つと位置づけられている。
デラウェアは米国中西部のオハイオ州で〝偶発実生〟として偶然発見され、165年前の1855年に同州デラウェア市で新品種「デラウェア」として発表された(米東部のデラウェア州とは無関係)。日本に入ってきたのは明治初期の1872年。5~6月ごろ長さ6~8cmの房状の花穂(かすい)に、花弁がない雄しべと雌しべだけの小花を付ける。ブドウの中では熟期が早い極早生品種で、7~8月ごろには赤紫色に熟す。ハウスものは5月頃から出回り始める。種なしブドウとして親しまれているが元々は種あり。開花前後に手作業で1房ずつジベレリンという植物ホルモン剤の溶液に浸すことで、初めて種なしブドウになる(十数年前このジベレリン処理に挑戦してみたが、タイミングが合わなかったのか、うまくいかなかった。というわけで、うちのデラウェアはずっと種あり)。
デラウェアは国内の栽培面積で長く他品種を圧倒していた。農林水産省の調査では約30年前の1989年、デラウェア(全国シェア38.7%)は2位の巨峰(16.6%)を大きく引き離していた。ところが2016年には巨峰(30.0%)にトップの座を奪われ、デラウェア(16.0%)はピオーネ(16.5%)にも抜かれ、さらにシャインマスカット(8.7%)など新興勢にも激しく追い上げられている。出荷量も1980年代に比べると半減。その中でデラウェア生産県として存在感を増しているのがサクランボで有名な山形県だ。栽培面積(2015年度)は山形県(全国シェア43%)が山梨県(19%)や大阪府(12%)を大きく上回る。県南部の置賜地方で栽培される「山形おきたま産デラウエア」は2006年〝地域団体商標〟として登録された。