【国内産バラ苗の多くが接ぎ木用台木として使用】
バラ科の落葉低木で、全国各地の山野や河岸などに自生し、朝鮮半島や台湾などにも分布する。高さは2m前後。5~6月頃、枝先の円錐花序に径2cmほどの白い5弁花を付ける。学名は「Rosa multiflora(ロサ・ムルティフローラ)」で、種小名も「多数花の」を意味する。よく似た仲間に花がやや小型のヤブイバラ、花が大きく淡紅色のツクシイバラ、日本海側に自生するミヤコイバラ、葉に光沢があるテリハノイバラなど。
ノイバラは秋になると小さな赤い実を結ぶ。漢方では「営実(えいじつ)」と呼び利尿剤などになるそうだ。国内で生産されるバラ苗の多くに、このノイバラが接ぎ木用の台木(だいぎ)として使われる。これはノイバラの根を借りることで、日本の気候風土に合った強い苗木を育てることができ早い成長が見込めるため。一方、イングリッシュローズなど外国産輸入苗は台木に「Rosa laxa(ロサ・ラクサ)」などヨーロッパ原産の野バラが使われることが多い。それらの輸入苗は高温多湿にやや弱く成長も緩やかだが、その分株がコンパクトにまとまって花付きもいいという利点がある。
ノイバラの古名は「うばら」または「うまら」。万葉集では防人の歌の中で「うまら(万葉仮名・宇万良)」として1首詠まれている。「道の辺の茨(うまら)の末(うれ)に這(は)ほ豆のからまる君をはかれか行かむ」(巻20-4352、丈部鳥=はせつかべのとり)。俳句では「花茨」「枯茨」「茨の実」などが季語になっている。「花いばら故郷の路に似たるかな」(与謝蕪村)