く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<イロハモミジ> 花後に〝翼果〟がくるくると風に舞い

2020年06月02日 | 花の四季

【「タカオカエデ」「イロハカエデ」の別名も】

 本州、四国、九州の山野に広く分布するカエデ科の落葉高木。大きなものは高さが20mを超える。カエデの仲間は国内に30種近く自生するが、単にモミジという場合、秋真っ赤に紅葉するこのイロハモミジを指すことが多い。庭木や公園樹などとしてもよく植えられる。風媒花。4~5月頃、本年枝の先に暗赤色の小花を付け、花後に赤い翼を横に広げた翼果がくるくると舞いながら落ちていく。紅葉の名所として有名な京都・高雄に多いことから、その地名に因み「タカオカエデ」とも呼ばれる。他に「イロハカエデ」や「コハ(小葉)モミジ」とも。

 葉はカエデ類の中で最も小さい径4~7cmほどの掌状で5~7深裂する。学名は「Acer palmatum(アセル・パルマツム)」。属名の語源は「鋭く尖った」を意味するラテン語から、種小名は「手のひら状の」を意味する(ちなみに「カエデ」という言葉も葉の形がカエルの手に似ていることから「蛙手」が転訛したもの)。イロハモミジの「イロハ」は裂片の数を「いろはにほてと」と数えたことに由来する。「モミジ」は秋に葉が色づくことを「もみつ(紅葉つ・黄葉つ)」(色を揉みだすという意)といい、これが名詞化し、さらに濁音化して「もみぢ」、そして「もみじ」と変化したそうだ。万葉集には「もみつ」や「もみち」の言葉に「黄葉」の字を充てた歌が数多く登場する。

 イロハモミジの変種には葉や翼果が大きな「オオモミジ」や日本海側の山地に多く葉がやや大きい「ヤマモミジ」などがある。江戸時代の元禄年間から明治時代にかけ、これらのモミジをもとに多くの園芸品種が作られた。福島県いわき市の「中釜戸のシダレモミジ」(樹種イロハモミジ)は国指定天然記念物。宮城県仙台市の「賀茂神社のイロハモミジ」、静岡県伊豆市の「青埴神社の枝垂れイロハカエデ」、広島県庄原市の「上市のイロハモミジ群」、長崎県松浦市の「福寿寺のイロハモミジ」など県指定の天然記念物も多い。モミジといえば秋の紅葉が人気だが、新緑の若葉も爽やかで美しい。吉田兼好も「徒然草」の中で「卯月ばかりの若楓、すべて、よろずの花紅葉にもまさりて、めでたきものなり」(第139段)と讃えた。若楓は初夏の季語。「鹿はまだ角芽ぐむ頃や若楓」(正岡子規)

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