【デンプン質の塊根は〝汗知らず〟天花粉の原料に!】
日本固有のウリ科カラスウリ属の多年生蔓植物。北海道南部から沖縄まで全国各地の山野や川べりなどに生えている。朝鮮半島から中国、ベトナムにかけ広く分布するトウカラスウリ(チョウセンカラスウリとも)の変種といわれる。雌雄異株。6~9月頃、直径5~10cmの真っ白い花を付ける。花弁の先端は細かく裂けて無数の糸状になって不規則に伸びる。花や草姿がカラスウリに似て、秋に果実が黄色く熟すことからその名が付いた。
学名「Trichosanthes kirilowii var.japonica(トリコサンセス・キリローウィ変種ジャポニカ)」。属名はギリシャ語の「thrix(毛)」と「anthos(花)」の合成語で、レース状となる花弁先端の様子を表す。種小名はロシアの植物学者の名前に因むという。キカラスウリはカラスウリ同様、日没後に開花する。ただカラスウリが翌日夜明けとともに早々としぼむのに対し、キカラスウリは昼すぎまで長く咲き続ける。キカラスウリの花粉を運んでくれる〝ポリネーター〟はストローのような長い口吻を持つ夜行性のスズメガたち。スカシバの仲間オオモモブトスカシバの幼虫の食草にもなっている。
キカラスウリの塊根は太く、きめの細かい良質のデンプンを多く含む。これを精製したものは吸湿性が高く、古くからベビーパウダーの「天花粉」(天瓜粉とも)の名前で〝汗知らず〟としてあせも用に使われてきた。キカラスウリの代用としてカラスウリの根が使われたこともあるそうだ。塊根の皮を剥いて輪切りにし乾燥したものは生薬名で「栝楼根(カロコン)」と呼ばれる。解熱や去痰、咳止めなどに効くという。なおカラスウリの語源については果実をカラスが好んで食べることから、果実が同じウリ科のスズメウリに比べ格段に大きいことから――など諸説あるようだ。