【朱雀門ひろばで、23日は「ガムラン」演奏なども】
「2022秋平城京天平祭 みつきうまし祭り」が10月22日、奈良市の平城宮跡朱雀門ひろばで始まった。奈良の食を味わい、古代行事や歌舞音曲を楽しもうという恒例の祭りで、春・夏・秋の年3回開催している。朱雀門の壇上では多彩なステージショーが繰り広げられ、朱雀大路には多くの飲食や農産物などの販売店が出店。天平衣装や奈良時代の遊びの体験コーナーなどもあり、初日から多くの人出でにぎわった。23日まで。
22日のステージは午前10時半、和太鼓「広陵金明太鼓」の演奏からスタートした。1994年に広陵町で結成され「命の響きを伝える」が合言葉。一糸の乱れもない豪快な演奏に日頃の練習の成果が表れていた。続いて登場したのは明日香村の「八雲琴(やくもごと)」のグループ。以前、地元の県立万葉文化館でその古を偲ばせる二弦の琴の音色に聴き入ったことも。この日は「秋の夕日の照山紅葉……」の「紅葉」など4曲を歌も交えながら披露した。
次は中国芸能の「龍舞」で、演じるのは2012年結成の大阪産業大学「OSU舞龍団」。メンバー10人余が玉を追いかける龍の様子を流れるような動きで表現した。かと思えば、龍の形が突然、巨大な菱形を2つ並べたような造形に早変わり。演舞後、観客から学生たちへ温かい拍手が送られた。舞龍団は龍舞世界大会への出場を目標に掲げているそうだ。
最後の演目は「変面」。顔の面を瞬時に取り替える中国四川省の伝統芸能だ。変面を見たのは2019年2月、長崎の「ランタンフェスティバル」のときだった。かつて中国映画『變臉(へんめん) この櫂に手をそえて』(呉天明監督)のビデオを見て感動。以来抱いていた生の変面を見たいという念願が3年前長崎で叶った。この映画は第9回東京国際映画祭で最優秀監督賞、最優秀男優賞を受賞している。
主人公を演じたのはNHKの『大地の子』でも脚光を浴びた朱旭。そのストーリーは――。子どものいない変面王が後継者を育てようと人買いから幼児を手に入れ、愛情を注いで芸を教える。ところがある時、その子は女の子と分かる。変面の技は男子しか引き継げないという伝統があった。老芸人は以来、失望し突き放そうとするが、少女は精いっぱい老人に尽くす。そして少女は償いのため幼い男の子を連れてくるが、そのために変面王が誘拐犯として逮捕されることに――。
今回久しぶりに天平祭を訪ねたのも、実はステージショーの中に変面が含まれていたため。やはりこの早業の芸は大人気だった。椅子席はもちろん満席、多くの立ち見客もできるだけ間近で見ようと前の方に集中していた。ステージに紫色の面を着けた男性が現れ、手を顔にかざすや瞬時に緑色や白い面に。司会者が事前に「声を出さずに拍手をお願いします」とアナウンスしていたものの、会場からは思わず「すごい」「ワー」といった歓声が起きた。
変面師はその後、朱雀門の壇上から降りて次々に瞬間芸を披露し、観客の小さな女の子を抱き上げるサービスも。瞬時に面を取り替えるこの変面にはどんなカラクリがあるのだろうか。演技中、ずっと目を凝らし見ていたが、やはり仕掛けはよく分からなかった。中国の“国家機密”とまでいわれる変面。素人に分からないのは当然か? ただ写真の1枚を拡大すると、目の上下に横に走るごく細い透明の紐状のようなものがかすかに写っていた。これが早業に何か関わりがあるのだろうか。
2日目の23日、朱雀門の歌舞音曲ステージでは奈良朱雀・奈良商工高等学校の「和太鼓 秋篠」やインドネシア芸能「ガムラン演奏&舞踊」などが行われる。