【昼の幟山が12段の提灯山に姿を変えて】
国の重要無形民俗文化財で、博多祇園山笠・小倉祇園太鼓とともに福岡県の3大夏祭りの一つに数えられる「戸畑祇園大山笠」が7月21~23日の3日間、北九州市戸畑区で繰り広げられた。最大の見どころは4年ぶりに開かれた中日22日夜の競演会。昼間の幟山から光のピラミッドに姿を変えた提灯山が「ヨイトサ、ヨイトサ」と担がれて進むと、その勇壮な姿に観客は暑さも忘れて酔いしれた。
競演会会場は戸畑区役所前とそばの浅生1号公園。夕方、東・西・中原・天籟寺の大山笠4基と中学生が担ぐ小若山笠4基の計8基が勢揃い。午後6時半、今年の当番山、東大山笠総監督による開会宣言に続いて各大山笠の囃子方による演奏が披露された。この後「運行開始!」の合図でまず8基が幟山の姿で公園を1周した。12本の幟や菊の花を模した前花、円形の見送りなどで飾られた山笠は華麗かつ厳かな雰囲気。
これらの飾り物が全て取り払われると、いよいよ姿変えの開始だ。提灯山は12段309個の提灯で飾られる。高さは10m、重さは2.5トンもある。提灯を取り付ける4本の支柱が立つと「5段上げ開始!」。各山笠はまず最上部の5段分を一気に組み立てる。次いで6段目、7段目……と進み、最後は一番下の12段目。いかに早く組み立てるか、早さと美しさを競う。ろうそくの灯が消えた提灯には担当者が上ってまた灯をともす。1番近い大山笠がまだ8~9段目のとき、遠くから太鼓が聞こえてきた。提灯山の完成を知らせる合図だ。
全8基の提灯山がそろうと、再び「運行開始!」。各山笠は約80人で担がれ、豪快な「おおたろう囃子」に乗って進む。ムカデ競走のように歩調を合わせ並足以上のスピードで。「ヨイトサ、ヨイトサ」。公園を何周か回った後、各山笠はそれぞれの定位置へ。この後、競演会一番の見どころを迎える。抜きつ抜かれつの「自由競演」の始まりだ。等間隔だった山笠の距離がみるみる狭まってくる。中には早くも小休止する山笠も。観客からは手拍子に加え「がんばれー」と声援が飛んでいた。午後9時「運行停止!」。だがヒートアップした山笠は動きを続けた。全基が停止したのはその合図から15分ほどたってからだった。
競演会に先立って、そばの飛旗八幡宮では昼間「神移し」の神事が行われた。例年、その場には東・西の大山笠と小若山笠の4基に、“客分”の天籟寺の大山笠と小若山笠の2基を加え、6基が勢揃いしていた。ところが今年は異変が! 天籟寺の2基が姿を見せなかったのだ。
戸畑大山笠は過去数年、役員による暴力団がらみの背任事件や幕類復元費用の水増し請求などの不祥事に揺れた。そのしこりや軋轢がなお尾を引いているのだろうか? 内情に詳しい祭関係者によると、不祥事に関わった人物は一掃されるどころか、また復活しているとか。
神社の境内には例年通り、武者人形などで飾られた子ども山笠も集結していた。数えると9基。神事の後、4基の大山笠と小若山笠は急な参道を「大下り」し、目抜き通りを巡行した。