【「東・お祭り広場」ちびっ子たちもお囃子を披露】
国の重要無形民俗文化財でユネスコ無形文化遺産にもなっている「戸畑祇園大山笠」は競演会翌日の7月23日、千秋楽(最終日)を迎えた。大と小若の親子山笠はそれぞれ東・西・中原・天籟寺の4地区ごとに地域内を巡行し、地元の住民や帰省客たちの前で改めて勇姿を披露した。
「東大山笠」は午後6時すぎからJR戸畑駅に程近い所で「浅生お祭り広場」を開いた。競演会同様4年ぶりの開催。沿道には多くの見物客が詰め掛け幾重もの人垣ができていた。前半の主役は一生懸命お囃子を演奏するちびっ子たち。浅生、牧山、新川など5つの地区の子ども山笠の囃子方が、練習の成果を次々と披露してくれた。囃子方は太鼓と鉦とチャンプク(合わせ鉦)で構成する。とても小学生とは思えない息の合った演奏が続いた。中には小さな園児も加わったグループもあり、演奏が終わるたび観客から大きな拍手が送られた。
続いて男子中学生が担ぐ小東山笠の囃子方が登場した。演奏したのはちびっ子たちと同じく戸畑祇園を代表する「おおたろう囃子」。太鼓の豪快な響きと切れ味鋭いばちさばきが印象的。大山笠でも通用するのではないかと思わせる力感あふれる演奏だった。ちびっ子や中学生たちには記念品として東大山笠オリジナルノートが贈られた。この後、東大山笠の囃子方による模範演奏が行われた。
午後7時になると、山笠の運行が始まった。前日の競演会同様、まず幟山の姿で会場を往復。この後、提灯の「5段上げ」から始まって次々に1段ずつ提灯が取り付けられ、高さ10mの提灯山が完成した。山笠が動きだすと、提灯のろうそくの灯も担ぎ手の動きに合わせ幻想的にゆらめく。大山笠と小東山笠が何往復かした後、最後には陸上自衛隊小倉駐屯地の隊員さんも担ぎ手として飛び入り参加していた。
この東大山笠の千秋楽で思い出すのが30年以上にわたって司会を務めた青木勇二郎さん(下の写真=2013年7月27日)のこと。「粋な法被姿が神さんの“足”になって進みます。ヨイトサ、ヨイトサ」。その名調子が祭の雰囲気を一層盛り上げていた。初めてお会いしたのは13年前の2010年。東大山笠の役員で戸畑郷土史会の事務局長も務めていた青木さんに、戸畑祇園にまつわる秘話などを教えていただいた。
青木さんは高校の大先輩でもあった。2021年の年賀状には達筆な文字でこう綴られていた。「牛がくる 馬がくる 麒麟がくる 風の如くおたづね下さい お茶とお話を用意しております」。なのに、その年の秋まさか亡くなられるとは。享年84。この日の4年ぶりのお祭り広場のにぎわいを、青木さんも天上から見守っていたことだろう。