汙気<ウキ>の上で天宇受売命は足を高く上げ飛ぶように跳ね舞います。すると、当然、汙気は、どんどんとそこら辺りを圧倒するかのように、大きくまた小さく天石屋戸の前を包み込みます。その内に、足をふみならしながら踊り続けているウズメ自身も、次第に「私」を忘れ無我の境地に陥り、もはや「ウズメ」は存在せず、ただ燃え盛る灯明の光が胡蝶のように、そこら辺りを無心に飛び跳ねているかのような幻想の世界に引きずり込まれるのです。それを古事記では
“為神懸而<カミガガリシテ>”
と書き現わしています。正心<マサゴコロ>が消えてしまい、自分でもどのように踊っているかさへ分からなく、ただ無心に踊り続けるのです。見ている神々も、ただ無言で見とれるばかりです。
「が」です。そこに突如としてある変化が呼び興こされるのです。