岡野工業では不良品を1個も出さない。
一体その秘密はなんなの だろうか?
なぜ不良品が出ないのか? こうして開発した注射針。「もう今から3年前に1億個達成しちゃった」と岡野さんが語るほど大量生産しているのに、不良品がないという。
岡野社長の言葉で言うと、「大企業っていうのは、図面がありますね、図面書くと必ず業者に出すわけ。専門家に。こういうの作ってこい、ああいうの作ってこいってね。作ってるほうはプロだから、図面の通りにやってくるわけだよ。だけど、1枚の図面の中には、公差といってプラスマイナスいくついくつと書かなきゃならない。でね、プラス1000分の1なら1000分の1でも、そういう公差を書かないと、加工屋さんはやってくれないわけだよ。それが、10工程も20工程も入れていけば、最後にはどのくらい変わっちゃうか。1000分の1でもね、ずーっとやれば、1000分の5狂っちゃう。そんな事したら合うわけない。金型合うわけないんだよ。大会社の中には、一人で1から10までできる人はいないの。だって1から10までできるような職人仕込んじゃったら、会社辞めて独立しちゃう。町工場は1から10まで全部できなかったら、まとまんないんだよ。自分でやんなかったら」
世界の誰にもまねできない、岡野さんのものづくり。その極意は三か条だそうだ。
第1条は、「応用、また応用で新しい技術を作る」。
金型で一枚の金属板を変形させるプレス加工技術は、金属の癖との戦いだ。岡野さんは、かつて手掛けたライターなどの金型を応用、ハイテク製品を作り出してきた。
第2条は、「これまでの限界を超えて金属を伸ばせ」。
「直径に対して、5倍ぐらい伸びるのが限界だよね。それ以上は伸びないと言われていたんですね。で、岡野さんは、5倍伸ばせるんだったら、10倍伸ばせないわけないと、チャレンジして成功した。しかし、図面がなく手探りの状態の中では、失敗の連続。一歩間違えば大けがをする危険と隣り合わせの中で、60年間仕事をしてきた。
「教科書には答えがあるんだよ。俺のやつには答えがねえんだもん。いくら勉強したって答えがないんだよ。だから自分で研究する。……苦しみが楽しいんだよ。苦しみが楽しみなの。自分で経験しなきゃだめだよ。だから、うんと失敗しなきゃ良い物できない。」(岡野社長)
又、 「中学中退で学歴もなくてさ、劣等感でハンデを持ってるから、やっぱり、人間っていうのはある程度、劣等感を持たなきゃとダメ、ハンデを持たなきゃ」 岡野社長はそう答えたそうです。
第3条は、「ハイテクを進化させるのは職人の勘」。
量産プラントを開発する時、自動工作機械は使わない。さらに岡野さんは、通常必要とされる設計図も書かない。これまでの経験と勘を頼りに、量産プラントのための金型と、プレス加工機を忍耐強く作り上げていく。
「図面を書かないっていうことは、同じものは二つできない。だから図面がないってことは、自由なんだよ。もっと良いものを作りたい、もっと良いものを作りたいって、欲が出てくるんだよ」(岡野社長)
やはり、岡野社長の言葉を聴くとびっくりしますね。今、77歳。まだまだ働き盛りの感じを受けました。今回で岡野社長の講演録は終わりです。
かごしま企業家交流協会
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