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絶対に見捨てへんで~子どもたちのまなざし⑨

2008年01月18日 | 土佐いく子の教育つれづれ


■康司君からの年賀状

 今年もたくさんの年賀状が届けられました。その中で一番うれしかったのが、この年賀状でした。

 

明けましておめでとうございます。
先生、お久しぶりです。お元気ですか?
僕は、今コンサートのステージ会場の足場及び建築の足場仮設などの仕事をしています。
一度コンサートに行ってみたいです。(私の三男がシンガーソングライターをしている)
でも、仕事の休みが決まってなくて、日曜も仕事があったりします。
危険な仕事ですが、今の仕事に生きがいを感じています。
先生、体に気をつけてくださいね。
追伸。拓也君(三男)、お母さんを大事にしろよ。



 先回「こんなお父さんいいな」で登場した康司くんからです。
 あれから10年、もう22歳の青年になりました。たくましい身体に汗して働く康司の姿が浮かんできて、胸がジーンとしました。「危険な仕事ですが、生きがいを感じています」と「です・ます」調で、ていねいに書かれた文体に、彼の今の生きぶりが見えてきます。康司、頼りにされてるんやなあ、よかったなあ、父ちゃんも母ちゃんも喜んでるやろと語りかけました。


■子どもたちから学ぶ

 パパになった喜びとともに「先生、3月に退職やろ、みんなで集まりませんか」と年賀状に書いてくれたのは、克ちゃんです。
 康司は何もかもが嫌になり、テストにも大きなバツをつけ「おれはアホ」と書き、一時間中テスト用紙の裏に絵を描いていました。テストの丸つけをしながらどうしたらいいものかと頭を抱えていたとき、さりげなく覗き込んで「先生、康司、テストの裏に絵描いてたで。それに丸したってよ」と言ってくれたのが克ちゃんでした。
 絵の中に康司がいるじゃないか、康司の心の表現があるよ、それに丸をしてあげてよと言うのです。またまた子どもに教えられました。
 6年生になって、こんなこともありました。父親との関係が変わってきたこともあり、康司は日記に「ぼくは、このごろ少し変わってきました。自由勉強もしてみようかなと思っています」と書いていた矢先のことでした。
 給食の米飯をよそってくれていたとき、友だちとトラブってキレた康司が米飯を手でグチャグチャと押しつぶしたのです。呆然と突っ立っていた私の横から和くんが飛び出していき、後ろからはがいじめにしながら「康司!康司!もうやめろ、お前この前自分が変わってきたって書いてたやないか」と制止してくれたのです。
 クラスの仲間たちは、康司が手を突っ込んだグチャグチャの米飯を何ごともなかったかのように、いつものように食べてくれたのでした。
 「お前が何をやったって、オレらは、見捨てへんで」というメッセージを伝え続けてくれた仲間たちでした。
 今の子どもたちをどう見てどう寄り添っていけばいいのかを学ばせてもらった2年間でした。
 年賀状の追伸の「お母さんを大事にしろよ」の言葉の中には「先生、あのとき迷惑かけてごめんな」という思いと同時に、苦労をかけた母さんへの思いが込められているようです。
(とさ・いくこ 大阪市立加賀屋小学校教諭)

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