学生の頃、対馬出身の先輩がおりました。歴史では鎖国中でも朝鮮との交易を行っていた、と習いました。本土の為政者にとっても覇権が及ばぬほど遠い孤島であった場所です。瀬戸内海の村上海賊については、この本を通じて制海権を一手に握る強大な権力を知りました。少年「笛太郎」が海賊集団に入り、成長していく様と、16世紀の海の道が通っていた地域の風土が見事に描写され、物語の展開にぐいぐいとひき込まれていきます。おもしろい!直木賞を受ける作品は、こうまで重厚に構成されているものだな、と感じさせられました。2作目の海王伝は、タイのアユタヤ、バンコクを舞台に父子、兄弟の争い、日本人町の人々との交流が細やかに表現されています。本のおもしろさをまたひとつ実感させられた白石一郎氏の力作です。福井のSさん、想わぬプレゼントがまたひとつ新しい作家との出会いとなりました。心から感謝です。「海狼伝」「海王伝」(白石一郎著 文集文庫 各660円)
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