海王伝では、瀬戸内の村上海賊衆が毛利方に付き、様々な火器を用い、織田水軍を撃破する場面(第一次木津川口の戦い)が描かれている。これによって石山本願寺は俄然勢いづく。この本の主人公は、海賊大名と称された九鬼義隆である。当時はまだ国司北畠氏の力が強く、惨敗し朝熊山へ逃亡。その後は滝川一益の仲介で織田信長に仕えるようになった。長島の一向一揆で武勲をあげ認められるようになった。先記の戦いで敗れた後(この時義隆は参加していない)、日本初の鉄甲船を建造した。第二次木津川の戦いでは、6隻の鉄甲船で600隻の毛利水軍を圧倒した描写は、胸躍る思いで頁を進めてしまった。3万5000石の大名となった後、秀吉の時代は日本丸を率いて朝鮮出兵に赴く。信長、秀吉、そして息子守隆は東軍に、義隆は関ヶ原の戦いで西軍に与した。最期自害するまでの、九鬼義隆の心情を
それまでの時代を駆け抜けた武将たる矍鑠さ、生き様を恐ろしいほどの命の絶ち方で締めくくっている。私にとっての白石文学は、最初はそれほどではないのだが、読み進めるほどに止まることを忘れてしまう世界であり、豊富な資料分析と豊富な知識、心情描写と物語構成に圧倒されるばかりなのである。「戦鬼たちの海 織田水軍の将 九鬼義隆」(文春文庫 670円 柴田錬三郎賞受賞)
それまでの時代を駆け抜けた武将たる矍鑠さ、生き様を恐ろしいほどの命の絶ち方で締めくくっている。私にとっての白石文学は、最初はそれほどではないのだが、読み進めるほどに止まることを忘れてしまう世界であり、豊富な資料分析と豊富な知識、心情描写と物語構成に圧倒されるばかりなのである。「戦鬼たちの海 織田水軍の将 九鬼義隆」(文春文庫 670円 柴田錬三郎賞受賞)