昨日は、特に予定に入れておらず、前売券も買っていなかったのだが、
柳家さん喬が(松喬との二人会のついでだろう)
繁昌亭昼席に出る、ということを知ったので行ってみた。
例によって梅田から歩き、12時15分くらいに窓口に行くと、
まだ補助席があった。
次の人からは立見というところ。ちょうど良かった。
「大安売」(松五):△
マクラは「まつごと読むと縁起が悪い」話。
こういったエピソードを絡めてくると、名前も覚えやすい。
ネタに入ると、松枝の弟子だからなのか落研出身なのか、
妙な間・リズムがある。
「親方衆や御贔屓衆のお情け」を強く言っていた。
その部分でのウケは大きくなるかも知れないが、
全体のバランスは悪くなるように思う。
10日間の言い立てはウケていたが、
後の名古屋や奈良は流した感じもあり、あまりウケていなかった。
話していない方の若い男が途中でイヤになっているのを、
話している男が抑える科白があり、そこは良い工夫だと思う。
この人が入れたのか、元から入っていたのかは分からないが。
「初天神」(しん吉):△+
マクラは吉朝も喋っていた学校寄席の話。
メクリについて「桂ーん吉ではありません」と言うのが面白かった。
みたらしのみ。
そのくせ「隣のおじさん」は入れる。
子どもまでが父親に「天神さんが白粉塗って紅差して」と言うのは初めて見た。
雀三郎に比べて、子どもがちょっとませて生意気な感じ。
蜜の舐め方がイマイチ。
団子と団子の間に蜜が溜まっている感じがしない。
「飯店エキサイティング」(遊方):△-
昔は感じなかったのだが、一生懸命出している割に声があまり通らない。
マクラからして素人っぽい。
それがこの人の味だろう。
ネタも、別に大したものではない。その辺りによくある面白い経験談風。
よくウケていたが、あまり積み上がる感じでもない。
しかし、この人も45か。
出丸とは違う方向だが、この人も年を感じさせないなあ。
「曲独楽」(伏見龍水):△+
怪しげな人だ。
いきなり小さなケン玉をやり、その後で独楽に入っていく。
剣先、輪抜け。
腕はあるのだろう、と思う。ただ米八より下かも知れない。
やけにちょこちょこ歩くのが妙。
「試し酒」(小染):△+
酔っ払いの「日だ月だ」小咄。
ネタは、江戸のものには及ばんなあ。
このネタの田舎者って、何の鬱屈もない人で、
別に酔っても本性が出る訳でもないし、特に絡む人でもないだろう。
金が欲しい訳でなく、
一つはお酒が好き、
もう一つは本当に主人が散財するのが気の毒さに、
5升の酒を呑もうとするのだと思う。
今日の小染の田舎者は、けっこう鬱屈したものを持っているようで、
確かに次第に本性を出していくあたりの科白でウケをとってはいるのだが、
あまり快さを感じられなかった。
もっとさっぱり、機嫌良く楽しく酔っていくべきものでは、と思う。
あと、地の部分や素面の登場人物の口調が、何か焦っているように聞こえる。
客として安心して委ねて笑う、という感じにならず、ウケが大きくならない。
盃を飲み干していくところ、仕草や酔っ払いの話し方などは流石。
「片棒」(雀松):○-
タイガーウッズなどを取り上げたマクラ。
ここまでの演者があまり最近の話題を取り上げていなかったので、
それだけでもいろいろ意識しているのだな、と感じる。
ネタはよく演っているものだろうが、細かいところはいろいろ手を入れていた。
順番に出てくるのではなく、最初は3人並んだところから話をしていく。
まあ、その方が「兄貴は何を考えてまんねやろな」の科白は自然になるかも知れない。
父親は長男・次男に腹を立てるのだが、
それが「金がかかる」ことに対してなのか、
「無茶を言っている」ことに対してなのかが
よく分からない。
三男を気に入るところ、サゲを考えると前者であるべきだと思うのだが、
葬式を派手で奇想天外にする方向に手が付けられており
「金がかかる」ところはギャグ・ツッコミともあまり強調されないので、
そのあたりが不明確になっている感じ。
「赤垣源蔵徳利の別れ」(菊池まどか):○
マクラ(というのか?)で何か素人っぽい、自分を卑下したようなことを言う。
このレベルの人がそんなことを言わなくても良いと思う。
細かい節回しなどよく分からないのだが、声が良いなあ。
歌い上げて伸ばすところだけでなく、
地の会話の声にも微妙なゆらぎがあって心地良い。
最後は「この続きはCDで」。
最初のCDの紹介とつなげてウケをとっていた。
その後くどくど言うのはあまり好きではないが。
「時そば」(さん喬):○
東京でやるより、若干「引く」「突っぱねる」風味が強いマクラ。
マクラのウケ方を見ていると、この人を知っている客がけっこう多かったように思う。
ネタは、まあ、いつもどおりで安心して聞ける。
若干、2人目の「昨日と同じ科白」から「想定外でずれる」部分での
仕草・発声をクサくしていたかも。
筋を進めていく際には表情付けや間をあまり強調していないので、
ずれた時の落差が大きく感じられる。
「ハイウェイ歌合戦」(勢朝):△+
マクラから好き放題。良くも悪くも、米朝の弟子らしくない。
ネタはいつもどおり歌う代物だが、
町内会の人々はタイガースの選手ではなく
民主党政権の閣僚などにしており、
それに合わせたギャグ(ダジャレの類)も入れていた。
好きな演者でもネタでもないが、このような工夫をするところは良い。
「転宅」(三喬):○-
小染と逆で、やたら落ち着いた口調で喋っている。
安心して聞き、笑っていられるのだが、
まだ若いのにおさまってしまっているなあ、という感じもする。
実際にはおさまっている訳ではないと思うのだが。
妾が旦那を路地の出口まで送っている間に、盗人が忍び込んでくる。
この入り方は良いと思う。
旦那が「戸締りをきちんとするように」と言ったところが
次の日に盗人がやって来たときに雨戸も閉まっている所につながったり、
いろいろな部分の仕込になっている感じ。
最初の盗人が食べる場面が、若干長いように思う。
あと、妾が盗人を見て「自分も盗人だった」と設定して伝えるのがかなり早い感じ。
まあ、このあたりはこれでも良いかも。
次の日のタバコ屋の場面で、
騙されたと気付くタイミングが早いように思う。
この盗人の抜け方からすれば、
最初の「泥棒に入られた」では
「自分の後に泥棒が来たのか、女は大丈夫か?」くらいに思っており、
次の「間抜けな泥棒で」では「同じような話があるんだな」程度、
結局「向かいは平屋」で騙されたと確信する、くらいの流れだと思う。
今日の流れだと、
「間抜けな泥棒」の話で確信しているように感じた。
「自分が騙されたと気付かない間抜けさ」には、
あまり力点を置いていなかったのかも知れない。
サゲは「浄瑠璃の三味線弾き」「道理で上手く調子を合わせた」。
「語る」よりは分かりやすいだろう。
満員だし、大きな外れもなかったし、よくウケていたのだが、
全体に、東京ネタが多い印象。
江戸からさん喬が出ているのだから、
上方の人は上方っぽいネタを演った方がバランスが良かったと思う。
あと、今回初めて補助席で見たのだが、
座ったときに手すりが視界に入り、少しうっとうしい。
私より背の低い人はもっと邪魔になるのではないか。
台か何かを置いて、その上にパイプ椅子を並べるなど、
何か手を打った方が良いのでは、と思った。
柳家さん喬が(松喬との二人会のついでだろう)
繁昌亭昼席に出る、ということを知ったので行ってみた。
例によって梅田から歩き、12時15分くらいに窓口に行くと、
まだ補助席があった。
次の人からは立見というところ。ちょうど良かった。
「大安売」(松五):△
マクラは「まつごと読むと縁起が悪い」話。
こういったエピソードを絡めてくると、名前も覚えやすい。
ネタに入ると、松枝の弟子だからなのか落研出身なのか、
妙な間・リズムがある。
「親方衆や御贔屓衆のお情け」を強く言っていた。
その部分でのウケは大きくなるかも知れないが、
全体のバランスは悪くなるように思う。
10日間の言い立てはウケていたが、
後の名古屋や奈良は流した感じもあり、あまりウケていなかった。
話していない方の若い男が途中でイヤになっているのを、
話している男が抑える科白があり、そこは良い工夫だと思う。
この人が入れたのか、元から入っていたのかは分からないが。
「初天神」(しん吉):△+
マクラは吉朝も喋っていた学校寄席の話。
メクリについて「桂ーん吉ではありません」と言うのが面白かった。
みたらしのみ。
そのくせ「隣のおじさん」は入れる。
子どもまでが父親に「天神さんが白粉塗って紅差して」と言うのは初めて見た。
雀三郎に比べて、子どもがちょっとませて生意気な感じ。
蜜の舐め方がイマイチ。
団子と団子の間に蜜が溜まっている感じがしない。
「飯店エキサイティング」(遊方):△-
昔は感じなかったのだが、一生懸命出している割に声があまり通らない。
マクラからして素人っぽい。
それがこの人の味だろう。
ネタも、別に大したものではない。その辺りによくある面白い経験談風。
よくウケていたが、あまり積み上がる感じでもない。
しかし、この人も45か。
出丸とは違う方向だが、この人も年を感じさせないなあ。
「曲独楽」(伏見龍水):△+
怪しげな人だ。
いきなり小さなケン玉をやり、その後で独楽に入っていく。
剣先、輪抜け。
腕はあるのだろう、と思う。ただ米八より下かも知れない。
やけにちょこちょこ歩くのが妙。
「試し酒」(小染):△+
酔っ払いの「日だ月だ」小咄。
ネタは、江戸のものには及ばんなあ。
このネタの田舎者って、何の鬱屈もない人で、
別に酔っても本性が出る訳でもないし、特に絡む人でもないだろう。
金が欲しい訳でなく、
一つはお酒が好き、
もう一つは本当に主人が散財するのが気の毒さに、
5升の酒を呑もうとするのだと思う。
今日の小染の田舎者は、けっこう鬱屈したものを持っているようで、
確かに次第に本性を出していくあたりの科白でウケをとってはいるのだが、
あまり快さを感じられなかった。
もっとさっぱり、機嫌良く楽しく酔っていくべきものでは、と思う。
あと、地の部分や素面の登場人物の口調が、何か焦っているように聞こえる。
客として安心して委ねて笑う、という感じにならず、ウケが大きくならない。
盃を飲み干していくところ、仕草や酔っ払いの話し方などは流石。
「片棒」(雀松):○-
タイガーウッズなどを取り上げたマクラ。
ここまでの演者があまり最近の話題を取り上げていなかったので、
それだけでもいろいろ意識しているのだな、と感じる。
ネタはよく演っているものだろうが、細かいところはいろいろ手を入れていた。
順番に出てくるのではなく、最初は3人並んだところから話をしていく。
まあ、その方が「兄貴は何を考えてまんねやろな」の科白は自然になるかも知れない。
父親は長男・次男に腹を立てるのだが、
それが「金がかかる」ことに対してなのか、
「無茶を言っている」ことに対してなのかが
よく分からない。
三男を気に入るところ、サゲを考えると前者であるべきだと思うのだが、
葬式を派手で奇想天外にする方向に手が付けられており
「金がかかる」ところはギャグ・ツッコミともあまり強調されないので、
そのあたりが不明確になっている感じ。
「赤垣源蔵徳利の別れ」(菊池まどか):○
マクラ(というのか?)で何か素人っぽい、自分を卑下したようなことを言う。
このレベルの人がそんなことを言わなくても良いと思う。
細かい節回しなどよく分からないのだが、声が良いなあ。
歌い上げて伸ばすところだけでなく、
地の会話の声にも微妙なゆらぎがあって心地良い。
最後は「この続きはCDで」。
最初のCDの紹介とつなげてウケをとっていた。
その後くどくど言うのはあまり好きではないが。
「時そば」(さん喬):○
東京でやるより、若干「引く」「突っぱねる」風味が強いマクラ。
マクラのウケ方を見ていると、この人を知っている客がけっこう多かったように思う。
ネタは、まあ、いつもどおりで安心して聞ける。
若干、2人目の「昨日と同じ科白」から「想定外でずれる」部分での
仕草・発声をクサくしていたかも。
筋を進めていく際には表情付けや間をあまり強調していないので、
ずれた時の落差が大きく感じられる。
「ハイウェイ歌合戦」(勢朝):△+
マクラから好き放題。良くも悪くも、米朝の弟子らしくない。
ネタはいつもどおり歌う代物だが、
町内会の人々はタイガースの選手ではなく
民主党政権の閣僚などにしており、
それに合わせたギャグ(ダジャレの類)も入れていた。
好きな演者でもネタでもないが、このような工夫をするところは良い。
「転宅」(三喬):○-
小染と逆で、やたら落ち着いた口調で喋っている。
安心して聞き、笑っていられるのだが、
まだ若いのにおさまってしまっているなあ、という感じもする。
実際にはおさまっている訳ではないと思うのだが。
妾が旦那を路地の出口まで送っている間に、盗人が忍び込んでくる。
この入り方は良いと思う。
旦那が「戸締りをきちんとするように」と言ったところが
次の日に盗人がやって来たときに雨戸も閉まっている所につながったり、
いろいろな部分の仕込になっている感じ。
最初の盗人が食べる場面が、若干長いように思う。
あと、妾が盗人を見て「自分も盗人だった」と設定して伝えるのがかなり早い感じ。
まあ、このあたりはこれでも良いかも。
次の日のタバコ屋の場面で、
騙されたと気付くタイミングが早いように思う。
この盗人の抜け方からすれば、
最初の「泥棒に入られた」では
「自分の後に泥棒が来たのか、女は大丈夫か?」くらいに思っており、
次の「間抜けな泥棒で」では「同じような話があるんだな」程度、
結局「向かいは平屋」で騙されたと確信する、くらいの流れだと思う。
今日の流れだと、
「間抜けな泥棒」の話で確信しているように感じた。
「自分が騙されたと気付かない間抜けさ」には、
あまり力点を置いていなかったのかも知れない。
サゲは「浄瑠璃の三味線弾き」「道理で上手く調子を合わせた」。
「語る」よりは分かりやすいだろう。
満員だし、大きな外れもなかったし、よくウケていたのだが、
全体に、東京ネタが多い印象。
江戸からさん喬が出ているのだから、
上方の人は上方っぽいネタを演った方がバランスが良かったと思う。
あと、今回初めて補助席で見たのだが、
座ったときに手すりが視界に入り、少しうっとうしい。
私より背の低い人はもっと邪魔になるのではないか。
台か何かを置いて、その上にパイプ椅子を並べるなど、
何か手を打った方が良いのでは、と思った。