

先週土曜は文楽劇場へ。
5千円出すほどでもない、と思っていたら、
朝行って2等が取れたので、見てきた。
襲名披露ということもあり、1等席はほぼ埋まっていた。
個人的には綱大夫(新源大夫)って好きでないので、
彼が口上に並ぶだけで出演はしない、というのは丁度良い。
「源平布引滝」
「竹生島遊覧の段」
うつらうつらしながら見ていたこともあり、あまり覚えていない。
後に「小まんの腕」が鍵になってくるところ、
「物語」で小まんの子である太郎吉(手塚光盛)が
実盛を「親の敵」と呼ぶことにつながってくるので、
その辺りの仕込みとして
この段を出すのは有意義だろう。
次の「糸つむぎの段」の前に
襲名披露口上が入る。
落語や歌舞伎と異なり、
普段声を聞かせない商売の人間が喋るのが、
文楽の襲名披露の面白いところ。
清治がけっこう早口で、何となく意外だった。
「糸つむぎの段」
口上後少し時間が空いた。
この段は、矢橋仁惣太という九郎助の甥がならず者である、ということを
見せる段になってくるのだと思うが、
個人的には省いても良いかな、と思う。
「物語」の最後に討たれる前提として
「悪者」であるところを見せるのだろうが、
次の「詮議の段」で平家方の2人を見せることで充分ではないかと思う。
「瀬尾十郎詮議の段」
腕を拾ってきた、という前半と、
斉藤実盛、瀬尾十郎による詮議の後半。
「切られた腕」に若干のグロは感じるが、
よく出来た、あまり無理のないストーリーだと思う。
瀬尾が腕を見てけっこう驚くのは、
「物語」で小まんの父親であることが明かされることを考えると、
単に「腕」だから、ではない、
仕込みの意味もあるのでは、と感じた。
住大夫は流石。
語りの粒立ちが別格で、字幕を見なくても科白が分かる。
# 他の大夫だと、「たぶん「ば」だと思うけど」といった
不安を感じて、字幕を見てしまうことがある。
瀬尾の科白の際の声の大きさも、素晴らしい。
一箇所詰まったところはあったが、それでも充分満足。
「実盛物語の段」
今回の襲名披露狂言。
但し源大夫休演で、代演は英大夫。
歌舞伎でも文楽でも、そこそこ有名な段だと思うのだが、
見るのは初めて。
後半の瀬尾の「モドリ」が如何にも芝居らしい。
個人的には、前提は無茶であるにせよ、
その「お約束」さえ認めれば、
瀬尾がわざと刺させるのもあまり無理のない設定だと思う。
最後の太郎吉が実盛を「親の敵」と言う流れや
「髪を黒く染めておく」とか言うのも、
後の段につなげる設定の仕方だな。
「篠原」とか、地名まで出すとさすがに無理だろう、と感じてしまうが。
新藤蔵は、意識して聞くのは初めてだが、
ちと声を掛け過ぎで耳障り。
弾き方にしても、派手で華麗な三味線、なのかも知れないが、
後で聞いた寛治の、動きは穏やかだが音の良い三味線に比べて、
何とも薄っぺらく感じた。
あと、2回糸を切っていたのは論外と思う。
「艶容女舞衣」
「酒屋の段」
クドキが有名な段だが、
全体通して見るのは初めてか。
最初の「丁稚が子どもを抱いている間に、母親がいなくなる」設定を
「お文さん」は取り入れているのかな。
個人的には、三勝半七やお園よりも、
宗岸や半兵衛といった父親世代に感情移入してしまった。
娘・不肖の息子に対する愛情といったあたり。
宗岸と半兵衛の相手のことを思いつつ、
一緒になることが逆に不幸になるから口では拒絶する、といった
二面性が好み。
お園は文雀。
少し右手を張っているようで、違和感があった。
「道行霜夜の千日」
詞章も会話も、あまり深みがあるように思えない。
「心中天網島」の「橋尽くし」くらいならばともかく、
別に道行を必ず出す必要はない、と個人的には感じる。
特に今回はやけに休憩時間が短かったので、
道行を切って休憩時間を延ばすほうが良いと思う。
「口上」の後時間が空いたこともあり、
15時40分頃終演。