仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

その部屋のドアⅣ

2008年05月01日 16時29分33秒 | Weblog
女は白いブラウスに紺のタイトスカート、ベージュのストッキングに黒のスリッポン、紺の軽めのブレザーを羽織っていた。ブラウスのボタンは意図的にか胸の谷間が見えるくらいまで外れていた。その清楚な格好から妙に胸元が気になった。
「何のようですか」
「ハイッ、今回の集会について二三御説明しようと思いまして」
「何時だと思ってるんですか、こんな時間に明日にしてください。」
「ご迷惑は承知の上です。今日は何時になく入部希望の方が多くて、今日中にご説明しなければならないのでこんな時間になってしまいました。」
「今日中じゃなくていいよ。帰れよ。」
そう言ってドアを閉めようとしたヒカルの手を女がスッと握った。その感触は、今まで感じたことない隠微なものだった。ヒカルは自分の手が性感帯になったような不思議な感覚にとらわれ、思わず手を引いた。それと同時にゴッツイ手がその部屋のドアを押さえつけた。学ランを来た男がこれ以上ないという笑みで顔を覗かせた。
「竹下です。」
女も何の疑いもない笑みで男を紹介すると
「あがっていいかしら」
というが早いか、台所の付いた半畳ほどの玄関に足を踏み入れた。男の威圧感がヒカルをたじろがせた。ヒカルが諦めるように部屋に戻ると女と男はきちんと靴を揃えて部屋の中に入ってきた。約2時間、先ほどわたされたパンフレットと「純血に向かって」という小冊子の説明が行われた。ヒカルの部屋の真ん中の小さなガラステーブルに女がヒカルの脇に座り、男が対面して、女はヒカルに体を擦り付けるように息がかかるほど近くで、ヒカルの腕には常に女の柔らかい胸が触れてきた。何を言っているのかはまったく理解できなかったが、女の胸の感触だけがヒカルの記憶に植えつけられた。堪えきれない眠気にヒカルが倒れ込むまで講和と接触は続いた。