仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

その部屋のドアⅥ

2008年05月08日 16時05分45秒 | Weblog
 美咲はやはり、ヒカルの脇にピタリとついて話を始めた。同じことを違う言葉で繰り返し説かれると頭の中に楔を打ち込まれたように記憶の中に蓄積される。さらに肉体的な条件反射が記憶の根元を刺激した。この状況で欲情し、美咲に襲い掛からないのはなぜか、ヒカルは「ベース」でのセクス以外に肉体関係を持ったことがなかった。それ故、どうしていいかわからなかった。ヒカルの股間ははち切れんばかりに高揚していた。美咲の体制はヒカルの左肩から覆いかぶさるように接近し、時に手を後ろに回し、頭をなで、身体が常に密着するように体制を変えた。左手は本の行を差しながら。ヒカルの脳が股間に襲われた。右手が美咲の左手をとらえた。グッと引き寄せ、立ち膝で対面するとノックの音がした。鍵はかかっていなかった。
「竹下です。」
美咲は恐怖に震えるでもなく、何もなったように座りなおした。当然、ヒカルは打ちひしがれたように座り込んだ。